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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第13章 失われた背中、残された影



翌日、朝の冷たい光が差し込む空き教室に集まったのはハリー、ロン、ハーマイオニー、そしてチユだった。

窓の外では鳥の声が聞こえ、まだ眠そうな空気が残っている。
みんなの視線は、机の上に置かれた一冊の古びた黒い日記帳に集まっていた。



「……昨日の夜、試したんだ」
ハリーが低い声で切り出した。
「日記にインクで文字を書き込むと、返事が返ってきたんだ。リドルが……中にいるみたいに」



チユは小さく息をのむ。日記と会話するなんて、信じがたい。
けれど、ハリーの真剣な目を見れば、冗談でないことは明らかだった。



「で……リドルが言ったのは」
ハリーは少し息をのみ、続けた。
「50年前、秘密の部屋を開けたのは――ハグリッドだって」



「ハグリッド!?」ロンが叫んで机を叩く。
「そんな馬鹿な! 絶対ありえない!」



チユは腕を組み、斜めに首をかしげる。
「でも…ハグリッドなら、ありえるかも……?」



3人が同時にこちらを見る。
チユは肩をすくめ、言葉を続けた。

「だって、怪物とか珍しい生き物とか、大好きじゃない? 秘密の部屋に大物がいるってわかったら……見たくてたまらなくなると思う」



「いやいや!」ロンは慌てて首を振った。
「だからって――そんなの……!」


しかし言い返した後、ロンの顔はみるみる曇っていった。
小屋で赤ん坊ドラゴンをこっそり育てていたことを思い出しているのかもしれない。
ハーマイオニーも口をつぐみ、深く眉を寄せる。


「……でも、それじゃあハグリッドが秘密の部屋の『後継者』ってことになるの?」
ハーマイオニーが堪えきれず声を発した。信じられない、という色がその目ににじんでいる。


ハリーは唇を結び、低い声で答える。
「……僕、日記を通して見たんだ。何か大きくて、毛むくじゃらのやつがいた。でも――ハグリッドが誰かを殺そうなんて、絶対にない」



「リドルが間違えていたのかもしれないわ」
ハーマイオニーがすぐに言葉を返す。
「本当の犯人は、別の怪物だったんじゃない?」



ロンはうんざりしたように天井を仰ぎ、ぼそりとつぶやいた。
「……ホグワーツに一体何匹怪物がいれば気が済むんだ?
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