第12章 秘密の日記
「……それ、なあに?」
ハーマイオニーの枕の下から、何か金色のものがはみ出しているのに気づいたハリーが尋ねた。
「ただのお見舞いカード」
ハーマイオニーが慌てて押し込もうとするが、ロンの手が先にそれを引き抜き、さっと広げて声に出して読んだ。
「“早くよくなるようお祈りしています。貴女のことを心配しているギルデロイ・ロックハート教授より”……君、こんなもの、枕の下に入れて寝ているのか?」
「ちょっとロン、それ、見ないで……!」
チユはその様子を見て、小さく笑った。
ます。
しかし、ちょうどそのとき、マダム・ポンフリーが夜の薬を持って威勢よく医務室に入ってきたので、ハーマイオニーは話の続きをすることなく、ベッドのカーテンの内側に姿を引っ込めた。
医務室をあとにして廊下へ出ると、ロンが待ちきれない様子で言った。
「ロックハートってさ、やっぱおべんちゃらの最低なやつだよな?」
「うん、まあ……」とハリーが曖昧に返しながら、ため息をついた。
た
そのときだった。
上の階から、怒鳴り声が響いてきた。誰かが激しく怒っている。
ロンとハリーがぴたりと足を止め、チユも遅れて2人の後ろに立った。
「あれ……フィルチじゃない?」ハリーがつぶやく。
「また誰か、襲われたとかじゃないよな?」ロンの声が、ふと低くなる。
3人は階段を駆け上がり、曲がり角に身を寄せた。
誰の姿も見えないが、ヒステリックな声がはっきりと聞こえた。
「……また余計な仕事ができた!ひと晩中モップをかけろってか?これでも働き足りんとでも言うのか!まったく、たくさんだ!ダンブルドアのところに行くぞ……!」
足音が遠ざかり、やがてどこかでドアの閉まる音が響いた。
3人は角からそっと顔をのぞかせた。
どうやら、またあの場所――ミセス・ノリスが襲われた廊下に来てしまったらしい。
「……うわ」
ロンが水たまりを見て息をのむ。
床は広範囲にわたって水浸しになっており、漏れてくる水は、女子トイレのドアの下から流れ出していた。
そして、フィルチの怒鳴り声が消えると、代わりにトイレの奥から、耳に残る泣き声が壁に反響してきた。