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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第11章 ポリジュース薬の完成


医務室の扉を押し開けると、マダム・ポンフリーがちょうど棚に薬瓶を並べているところだった。


「またあなたたち?いったい今度は――」


振り返った彼女は、ハーマイオニーの顔を見た瞬間、言葉を失った。


「まあ……入ってらっしゃい!」


ハーマイオニーはうつむいたまま、無言で医務室に足を踏み入れた。
チユもついて行こうとしたが、マダム・ポンフリーが手を挙げて制した。


「あなたたちは、寮に戻りなさい」


その声音に逆らえず、3人は名残惜しそうにハーマイオニーを見送り、医務室を後にした。

チユは、うつむいたままのハーマイオニーの背中が目に焼きついて離れなかった。
猫の顔、震える指、肩の重み――全部が、彼女の勇気の証だった。



「…それで、何か聞けた?」


ロンがうなずいた。


「まあ、うん。こっちがゴイルになってる間、アイツ、けっこう喋ったよ」

「言ってたのは、例の怪物のこと」ハリーが続けた。

「『怪物はスリザリンの継承者のもの』って。自分じゃないって言ってたけど、継承者は“ホグワーツにいる”って」


チユは思わず息を呑んだ。


「本当に……怪物がいるんだ。しかも、まだ動いてる」


ロンが肩をすくめる。



「マルフォイは、継承者が誰かは知らないみたいだった。言ってたのは、昔、秘密の部屋が開いたときにも生徒が襲われたってことくらい。なんでも、犯人は学校を追い出されたとか」


「えっ、前にも開いてたの…?」


「うん。でも、誰が犯人だったのか、マルフォイも知らないって」
ハリーの声には、疲れと焦りが混じっていた。


「ただマルフォイの親父はその時の事を誇らしげに語ってるらしい『一掃して当然』だって」

「…一掃……」


チユは小さく呟いた。
血筋。偏見。恐れ。ゼロがマルフォイと距離を取った理由も、その中にあったのかもしれない。


「ごめん。私は、何も聞き出せなかったの……」


俯いたチユに、ロンがあわてて手を振った。


「そんなの、しょうがないって。俺なら吐いてたぞ……グレインの姿でマルフォイと話すなんて無理」

「でも、はっきりした。怪物はいる。継承者もどこかにいる。そして、秘密の部屋も存在してる」


3人は階段を静かに上がっていった。
遠くから、時計の鐘が低く鳴り始める。

物語が、ゆっくりと核心に近づいていく音だった。
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