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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第11章 ポリジュース薬の完成



「でもまあ、クラッブとゴイルとグレインが並んで歩いてたら、絶対なんかおかしいってバレるな」

「うん……別行動した方がいいかも」


チユは小さく返事をして、肩に落ちる深い黒髪をそっとかき上げた。
ゼロの顔のままで歩くなんて、本当は心臓がバクバクするほど怖い。
でも――

(逃げられない)

今のチユの目には、ゼロがいつも纏っているあの「堂々とした静けさ」が、ほんの少しだけ宿っていた。


「ハーマイオニー、遅くない?」


ロンが眉をひそめて、トイレの個室のドアをドンドンと叩いた。


「出てこいよ、行かなくちゃ……!」


返ってきたのは、かん高く、どこか泣きそうな声だった。


「わ、私……行けないと思うわ。3人だけで行って……!」



「ハーマイオニー、ミリセント・ブルストロードがちょっと……その、顔がアレなのは、分かってるよ。でも誰も君だなんて分からないよ」


すると中から、必死の声が響いた。


「ダメ!3人とも急いで行って!時間をむだにしないで!」


ハリーが当惑したようにロンを見ると、ロンは肩をすくめた。


「……ハーマイオニー、大丈夫なの?」
チユが優しくドア越しに声をかけた。


少し間があってから、細く、震える声が返ってきた。

「私は大丈夫だから……行って……!」


(ほんとに大丈夫なんだろうか……)


チユは心配で眉をひそめたが、そのときハリーが腕時計を見た。

「……もう5分過ぎてる。あとでここで会おう、いいね?」


ハリーの言葉に、ドアの向こうからかすかに「うん」と返事が聞こえた。

クラッブ、ゴイル、そしてゼロの姿の3人は、トイレの入口の戸をそろそろと開けた。
あたりに誰もいないことを確かめると、廊下へと足を踏み出した。



「なにかあったら、急いで戻ってきて。絶対、無理はするなよ」

「うん。……2人も気をつけてね」


そう言い交わして、3人は廊下の暗がりで小さく手を振りあった。
それぞれの役目を胸に抱えて。
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