第11章 ポリジュース薬の完成
「でもまあ、クラッブとゴイルとグレインが並んで歩いてたら、絶対なんかおかしいってバレるな」
「うん……別行動した方がいいかも」
チユは小さく返事をして、肩に落ちる深い黒髪をそっとかき上げた。
ゼロの顔のままで歩くなんて、本当は心臓がバクバクするほど怖い。
でも――
(逃げられない)
今のチユの目には、ゼロがいつも纏っているあの「堂々とした静けさ」が、ほんの少しだけ宿っていた。
「ハーマイオニー、遅くない?」
ロンが眉をひそめて、トイレの個室のドアをドンドンと叩いた。
「出てこいよ、行かなくちゃ……!」
返ってきたのは、かん高く、どこか泣きそうな声だった。
「わ、私……行けないと思うわ。3人だけで行って……!」
「ハーマイオニー、ミリセント・ブルストロードがちょっと……その、顔がアレなのは、分かってるよ。でも誰も君だなんて分からないよ」
すると中から、必死の声が響いた。
「ダメ!3人とも急いで行って!時間をむだにしないで!」
ハリーが当惑したようにロンを見ると、ロンは肩をすくめた。
「……ハーマイオニー、大丈夫なの?」
チユが優しくドア越しに声をかけた。
少し間があってから、細く、震える声が返ってきた。
「私は大丈夫だから……行って……!」
(ほんとに大丈夫なんだろうか……)
チユは心配で眉をひそめたが、そのときハリーが腕時計を見た。
「……もう5分過ぎてる。あとでここで会おう、いいね?」
ハリーの言葉に、ドアの向こうからかすかに「うん」と返事が聞こえた。
クラッブ、ゴイル、そしてゼロの姿の3人は、トイレの入口の戸をそろそろと開けた。
あたりに誰もいないことを確かめると、廊下へと足を踏み出した。
「なにかあったら、急いで戻ってきて。絶対、無理はするなよ」
「うん。……2人も気をつけてね」
そう言い交わして、3人は廊下の暗がりで小さく手を振りあった。
それぞれの役目を胸に抱えて。