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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第11章 ポリジュース薬の完成



そのとき、別の個室のドアが開いた。
ゴゴッと重たい足音とともに、クラッブとゴイルが――いや、ハリーとロンが現れた。


「うえぇ……最悪だ、この味……」


ロンの声は低くて太く、聞き慣れない響きだった。
チユは口を開けかけて、けれど声が出なかった。



「俺、ちゃんとクラッブになってるよな……ハリー?」

「うん、君は完璧だよ……」


ロンとハリーが顔を見合わせたあと、チユに目を向けた。


「……え?」


ロンもつられて振り向いた。
そして、2人の目が揃って見開かれた。


「おい、なんでグレインなんだよ!?」


クラッブの姿をしたロンが叫ぶ。
チユは心臓をわしづかみにされたような気持ちになって、反射的に言い返す。


「わ、わたしだって聞きたいよ……!」


声は低くて、震えていた。ゼロの声だ。自分の声じゃない。


チユはローブの裾をぎゅっと握った。
ハリーとロン――いや、クラッブとゴイルの姿の2人は、あ然としてチユを見ていた。


「チユ、どういうこと……髪の毛、間違えたの?」

「たぶん……ぶつかったときに取ったと思ってたけど、私のローブについてたの……きっと、その前から……」



チユは言葉を切り、ゼロの姿で鏡の自分をちらりと見やった。

完璧な顔。氷のような瞳。艶のある黒髪。
さっきまで自分だったのが、いまは、誰よりも遠い人の顔をしている。



「案外そのまま入れるんじゃない?」


ロンが、呑気にチユを見ながら言った。


「え?」


チユ――いや、今はゼロそっくりの姿をしたチユが、ぴくりと肩を揺らす。



「グレインはスリザリン顔だしさ。というか、なんか……その緑のローブ、グリフィンドールのより似合ってる気がするんだけど……」

「な、何言ってるの!? 無理に決まってるでしょ!」


チユは半泣きの声で言いながら、自分の黒い髪をぐしゃぐしゃにかき乱した。



「でもさ……ゼロって、マルフォイと幼なじみなんだよ。だったら、ちょっとぐらい話しかけても変じゃないかも」


チユがごそごそと袖を直しながら言った。



「だったら、案外それを使えば何か聞き出せるかも。談話室に入れなくても、廊下でマルフォイを捕まえれば――」


チユは俯いたまま、靴のつま先を見つめる。
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