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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第11章 ポリジュース薬の完成



チユは鼻をつまみ、覚悟を決めてポリジュース薬をゆっくりと喉に流し込んだ。
その味は、まるで煮込みすぎたキャベツが喉にまとわりつくようで、気持ち悪さがじわじわと広がっていく。

だが、次の瞬間、まるで生きた蛇が何匹も胃袋の中で暴れているかのように、内臓がぎゅうっと締めつけられた。激しい吐き気が全身を襲い、思わず体をくの字に折り曲げる。

胃から焼けつくような熱がじわりと手足の指先まで広がると、呼吸は次第に浅く、苦しくなっていった。
まるで全身の細胞が溶けていくかのような気持ち悪さに、四つんばいにならざるを得なかった。

皮膚は蝋のように熱でとろけ、ぶくぶくと泡立ち始める。
チユの目の前で、自分の手はどんどん大きくなり、骨が浮き出した。


(パンジーの手って、こんなに骨ばってたっけ……?身長も、私より低いはずなのに……)


戸惑いと焦りが胸を締めつける。
どうやらポリジュース薬は完璧にはいかなかったらしい。


「みんな、大丈夫?」ハリーの声が耳に届き、ハリーの問いかけに答えた自分の声を聞いて、チユは冷や汗をかいた。


慌てて着替え用のローブを掴み、個室を飛び出す。
そこにあった鏡の前に立つと、映った自分の姿に息を飲んだ。


そこに映るのは、整った端正な顔立ちを持つ、美しい少年――ゼロ・グレインの姿。


透き通るような白い肌に、鋭い彫刻のような顔のライン。
黒く艶やかな髪は無造作に額を覆い、その目は氷のように冷たく澄んでいる。


チユの視線は自然とその身体へと下がった。
意外にも、細身に見えるその体は引き締まった筋肉で覆われていて、細い腕には確かな力強さが感じられた。


普段は恥ずかしくて、彼の顔をじっくりと見たことがなかったけれど、こうして間近で見るゼロの姿は、まるで彫刻のように美しく、そしてどこか遠い世界の人のように感じられた。


「どうして……?」その声が、わずかに震えていた。


パンジーになるはずだった。
変身前に入れた髪の毛は、ぶつかったときに付いていた物で、間違いないはずだ。

でも。

(もしかして…あれ、もっと前からついてた?)


髪の色は、ゼロもパンジーも黒。
でも、ゼロのはもっと深い、光を吸い込むような黒で――今のチユの髪がまさにそれだった。


チユはこめかみに手を当てた。
ゼロの姿ではスリザリンの談話室に入る事が出来ない。
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