第11章 ポリジュース薬の完成
ハーマイオニーが熱心に大鍋の中をかき混ぜている小部屋から、濃い黒煙がもくもくと立ち昇り、辺りは煙で霞んでいた。
チユはその煙の中で、ハーマイオニーの真剣な横顔を見つめていた。
彼女の手際の良さにいつも感心するけれど、今日は特に緊張が漂っている。
ドアのかんぬきが外れる音がして、ハリーとロンがわずかに息を切らせながら顔をのぞかせた。
「取れた?」ハーマイオニーが息をはずませて聞く。
答えは聞かずともわかった。
2人は満足そうに笑い、手にはしっかりと髪の毛が握られている。
「けっこう。私のほうは、洗濯物置き場から、着替え用のローブを4着、こっそり調達しといたわ
4人でポリジュース薬をじっと見つめる。
近くで見ると、薬はどろりとした黒っぽい泥みたいで、ボコッボコッと泡が立っていた。
「間違いない。ちゃんと作れてると思う」ハーマイオニーは魔法薬の本を神経質に見ながら言った。
「見た目も本に書いてあるのと同じだし…これを飲んだら、元の姿に戻るまでちょうど1時間よ」
「次は何をするの?」ロンが小さな声で尋ねた。
「薬を4つのグラスに分けて、それぞれに髪の毛を入れるの」
ハーマイオニーがひしゃくで薬をたっぷり注ぎ、その後、小瓶からミリセント・ブルストロードの髪の毛を自分のグラスに入れた。
薬はシューッと音を立てて泡立ち、すぐに気持ち悪い黄色に変わった。
「うぇっ、ミリセント・ブルストロードの匂いだ…マジか」ロンは顔をしかめた。
「本当に?」チユが眉をひそめて言うと、ロンは自信なさげに「うん……たぶん!」と曖昧に答えた。
「さあ、みんなも入れて」ハーマイオニーが促した。
3人が髪の毛を入れるとどれもがシューシューと泡立った。
色はゴイルのが鼻くそのようなカーキ色、クラッブのは濁った暗褐色に変わり、パンジーのは鮮やかな紫色に変化した。
「パンジーのがこんな綺麗な色だなんて……なんか、ちょっとムカつくかも」チユが小さく呟く。
「ちょっと待って」みんながグラスを取り上げようとした時、ハリーが制止した。
「4人いっぺんにここで飲むのはやめたほうがいい。クラッブやゴイルの姿になったら、この部屋に収まらなくなる」
「よく気が付いた!」ロンは扉を開けながら言った。「じゃあ、別々の部屋で飲もう」