第11章 ポリジュース薬の完成
「これから変身するには、相手の一部分が必要なの」
ハーマイオニーが静かに言った。
ハリーとロンは顔を見合わせた。
チユも、小さく息をのんで、ハーマイオニーの次の言葉を待った。
「髪の毛か、爪。そういうもの。私はもう準備してあるわ」
「誰に変身するの?」とハリー。
ハーマイオニーはポケットから小瓶を取り出した。中には髪の毛が一本、揺れている。
「決闘クラブでミリセント・ブルストロードに襲われたとき、ローブに残ってたの。彼女は今ホグワーツにはいないから、寮に戻ってきたって言えば不自然じゃない」
「わー…」
ロンが引きつった顔でつぶやく。「それ、取ったのもすごいけど、取っておいたのもすごいな……」
ハーマイオニーはロンのコメントを完全に無視しながら、チョコレートケーキを2つ差し出した。
「この中に、簡単な眠り薬を混ぜてあるの。あの2人の目の前にこれを落としておくだけで――たぶん、迷いもなく食べると思うわ」
「うん……絶対、食べるね」
チユが小声でつぶやく。
「でしょ?意地汚さに関しては、あの2人が校内トップよ」
「で、それから?」とハリー。
「眠ったら、髪の毛を2、3本引っこ抜いて、それから2人を掃除用具入れにでも押し込んでおくの。ほら、箒の隣りにでも」
淡々としたハーマイオニー口調に、ロンが肩をすくめて呟いた。
「うーん……君って本当、おっかないや」
ハーマイオニーは続ける。
「失敗したらどうなるか、分かってるわよね?でも、ポリジュース薬は材料が揃わないと完成しないの。もう後戻りはできないわ」
その場に短い沈黙が落ちた。
「……私はパンジー・パーキンソンに変身する」
チユが静かに言った。
ハリーとロンが顔を向ける。
「マルフォイの近くに自然にいられるし。ほら、あの子よく一緒にいるから――」
「どうやって髪の毛を取るの?」とハリー。
チユは、少しだけ誇らしげに言った。
「前にね、廊下でぶつかったときに、役に立つかもって……ローブに着いた毛を取っておいたの」
そう言って、チユは黒い髪の毛を取り出した。
「…おお……」
ロンが小声で唸った。
「ここにもいたよ、おっかない人種……」
静かな気配の中で、作戦の空気がじわりと張りつめていった。
この夜、すべては準備にかかっていた。