第2章 秘密の夏休み
ジョージが車の後部から太いロープを引っ張り出した。
「じゃ、やるか!」
「うむ!」
2人は手際よく窓の鉄格子にロープをくくりつけ、ぐるぐると巻きつける。
フレッドが車に飛び乗りながら言った。
「いくぞジョージ、スリー、ツー、ワン!」
ブォンッ!!
車が勢いよく後方に動き出すと同時に、バギィィィン!!とものすごい音を立てて鉄格子が窓から引きはがされた。
「ナイスぅうううう!」
フレッドが拳を突き上げる。
「さあハリー!脱出タイムだ!」
ロンが後部座席から身を乗り出して、窓の柵越しに手を伸ばす。
「ハリー、荷物は?トランクとかフクロウとか、持ってこれる?」
「すぐ持ってくる!待ってて!」
ハリーが部屋の中に消えていく。
その間も、怒号が近づいてきていた。
階段をドスドスと踏み鳴らす音――どうやら本気で止めに来ているらしい。
「やばいねこれ、あと30秒ももたないな」
ジョージが冷静に状況を見つつ、車のエンジンに手を添えた。
「ったく、早くしろよプリンス。お迎えの馬車が泣いてるぜ」
フレッドが腕を組みながら窓の中を覗き込む。
「あとちょっと!もうすぐ出るって!」
チユが必死で呼びかけると――
「来た!」
ロンが叫んだ。
ハリーが大きなトランクを引きずりながら戻ってきた。
その後ろには、籠に入ったフクロウのヘドウィグが鳴いている。
「手、貸して!」
チユが鉄格子越しに腕を伸ばす。
「ありがと!……せーのっ!」
「わっ、重っ!」
チユがよろめきそうになったところに、すかさずロンが手を伸ばしてくれた。
「おいジョージ、後部ドア開けろ!」
フレッドが叫び、ジョージが素早く車のトランクを開ける。
その間にも、階下ではドアがバタン!と開く音が響いた。
「急いで!!!」
チユが焦った声をあげた瞬間、ハリーが最後にヘドウィグの籠を押し出す。
ハリーは窓から身を乗り出して、チユとロンに引っ張られるようにして車内へと飛び込んだ。
「出すぞ!」
ジョージがアクセルを踏み込む。
次の瞬間――車は夜空へとぐんと浮かび上がり、怒鳴り声が遠ざかっていく。
「バイバァーイ!ダーズリー家の皆さま!」
フレッドが窓から手を振る。
「忘れ物があったら、来年また迎えに来るからね〜!」