第11章 ポリジュース薬の完成
「……なんか、詩的だね。それ」
「うおっ、やっば。自分で言ってて鳥肌立った……!」
ジョージは即座に両腕をぶんぶんと振って、あたふたと身をよじった。
けれど、チユの視線はもう、その耳に釘付けだった。
――真っ赤だ。まるで火の粉にでも照らされたみたいに、ぽっと赤く染まっている。
「取り消し、いまの取り消し!」
ジョージは早口でまくしたてた。
「遅いよ」
チユは、くすっと笑いながら答えた。
彼は頭を抱えて、暖炉の前にうずくまる。
「フレッドにバレたら、絶対1ヶ月は笑われるなぁ……いや、最悪一生かも……それか“ジョージ・ザ・ロマンチック”ってあだ名になる……やばい……」
そんなふうに大袈裟に嘆くジョージを見て、チユの胸の奥に、ぽっと何かが灯った。
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さっきの言葉が、ちゃんと心に届いていた。それはちょっと、くすぐったくて、温かくて――少しだけ照れくさかった。
だから、ほんの少しの沈黙のあとで、チユはぽつんと呟いた。
「でも……ちょっとだけ、嬉しかったよ」
「それ、俺がうっかり本気にしちゃったら、どうすんのさ……」
小さな声だったけど、静かな談話室ではちゃんと届いた。
チユはそのまま、何も言わず、静かに微笑んだ。
暖炉の火が、ゆらりと揺れて――
2人の影を、ひとつに重ねた。