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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第11章 ポリジュース薬の完成


その日の談話室の夜は、何だか不思議な静けさに包まれていた。

チユは、暖炉の前にひとり腰をおろしていた。
まだ部屋に残るみんなの笑い声の余韻。にぎやかだった時間が、名残惜しいように漂っていた。


火のゆらめきをぼんやり見つめながら、ふと、チユは空を見上げた。
少しだけ、胸がきゅっとなる。



(リーマス、も今頃1人で見てたりするかな。……風邪、引いてないといいけど)



「おーっと、お姫様が黄昏れてらっしゃる〜〜」


突然背後から聞こえた声に、チユはびくっと肩を跳ねさせた。


「び、びっくりした! 静かに歩かないでよ」

「いやいや、姫の思索の邪魔にならぬよう、慎ましく参上しただけです」


ジョージはにやっと笑って、隣に腰を下ろした。
しばらくの沈黙の後、チユは言いにくそうに口を開いた。


「……リーマスのこと、考えてたの」

「やっぱり」


彼は火のほうを見ながら、肩をすくめた。


「チユがこうやってホグワーツで元気でいてさ、ちゃんと笑ってたら……きっと安心すると思うよ」


チユはうなずいた。けれど、胸の奥がきゅっとなったまま、うまく言葉にならなかった。
ジョージは続けた。


「ま、チユが元気ないと俺も、フレッドもつまんないしね」

「……ありがとう」


小さくそう呟いたチユに、彼は「どーいたしまして」と調子を合わせて笑った。


「みんなはもう寝た?」

「うん。フレッドは鼻鳴らして爆睡中。パーシーは監督生の“使命”とか言って書類整理してたけど、途中でこっくりいってた。ロンとハリーは何かゴニョゴニョやってたな〜。あやしいやつらだ」

「ふふっ」


暖炉の火が、パチパチと小さな音を立てる。
ジョージはしばらく黙って火を見ていたけれど、ふいに、ぽつんと言った。


「ねえ、チユ」

「うん?」


ジョージの声が、いつになく優しかった。


「火の前で2人きりってさ……ちょっと特別な感じしない?」


チユは不思議そうに首をかしげた。


「何が?」


「いや……その、さ。だから――この先、ちょっとだけ君のことを、特別に思っても……怒らない?」


一瞬、時間が止まったような気がした。


チユは、ほのかに赤くなった頬を隠すようにして、そっぽを向いた。
ジョージはぴくりと反応したものの、顔はそむけたまま。
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