第11章 ポリジュース薬の完成
とうとう学期が終わり、雪とともに訪れたのは、ひっそりとした静寂だった。
でもそれは、チユにとっては寂しさではなくて、自由に近かった。
ホグワーツに残ったのはほんの数人――ハリー、ロン、ハーマイオニー、そしてチユ。加えて、双子、それにパーシーとジニーも居残った。
パーシーはというと、談話室にはほとんど姿を見せず、時折現れても「お前たちの軽率なふるまいは実に問題だ!」と眉間にしわを寄せて説教するだけ。
「クリスマスに居残っているのは、監督生としての責任感と――」
「逃げ遅れただけだろ」ジョージがぼそっと言う。
「まあ、ビルのとこ行くよりこっちのほうが100倍楽しいからね〜」
フレッドが暖炉の前で寝転びながら、トランプを片手に言った。
チユは丸まった姿勢で暖炉の前にちょこんと座り、トランプを手に取った。
「さあ、覚悟してね、爆発スナップ今日はわたしが勝つから!」
「おっとっと、それは宣戦布告かい、ミス・クローバー?」
フレッドが腰を浮かせ、眼光をギラリと光らせる。
「うわ〜…戦争がはじまる前に、僕の勝利宣言しとくね」
ジョージがのんびりとカードを一枚弾く。
「このカード曰く、“今日の勝者はジョージ様!”……だって!」
「カードは喋らないよ」チユが呆れ顔で突っ込んだ。
その瞬間、パンッ!
爆発スナップのカードは、と煙を上げて弾けた。
チユの手がびくっと跳ね、隣のジョージのセーターにぴたりとくっついた。
「……今の、びびった?」
「びびってない!」
「……ちょっと跳ねたよね?」
「跳ねてないよ!」
「跳ねてたな〜!かわい〜〜〜〜!」
フレッドが即座におどけてくる。
「こわかったねぇ〜〜チユちゃん〜〜〜〜」
ジョージがさらに拍車をかけると、チユの手がクッションをむんずと掴んだ。
「もう!」チユがクッションを振り上げると、双子は「ぎゃー!」と叫びながら逃げ回った。
その様子を見ていたジニーが、くすくすと笑いをこらえながら言う。
「……バカみたい」
「愛が重すぎるんだよ、あれ」
ロンがぼそりと漏らしたが、チユの耳には届いていなかった。
暖炉はパチパチと機嫌よく火花を散らし、グリフィンドールの談話室には、まるで春みたいなあたたかさが流れていた。