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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第11章 ポリジュース薬の完成


次の日ジャスティンと、ほとんど首無しニックの2人が同時に襲われたというニュースを知らされる事になった、ホグワーツに本格的なパニックを引き起こした。


だが――生徒たちの恐怖を決定づけたのは、その“被害者”ではなかった。


「第一発見者が、ハリー・ポッターだったらしい」


その一言が、噂に火をつけた。

「またあいつが現場にいたんだって」
「今度はゴーストまで……」
「蛇と話せるし、継承者っての、ほんとなんじゃない?」

チユは談話室の端でその囁きを聞いた。背中がぞくりとした。
ハリーの名が出るたびに、周囲がピリつき、空気が硬くなっていくのが肌で感じられた。


生徒たちは次々にホグワーツ特急の予約リストに名前を書き、クリスマスを家で過ごす準備を始めた。まるで、城から逃げるように。


「このままじゃ、僕らだけが残るかもな」


ロンが肩をすくめながら言った。


「僕たちと、マルフォイと……クラッブとゴイル。最高の休暇だな、ほんと」

チユは乾いた笑いをこぼした。
ホグワーツで過ごす初めてのクリスマスだというのに、最悪な気分である。


クラッブとゴイルは、いつものようにマルフォイの後をついて、居残りリストにも迷わず名前を書いていた。


でもハリーにとっては、生徒が減るのはむしろ歓迎だったようだ。
城内で誰かとすれ違えば、その誰もが、まるで彼が突然牙でも生やして襲いかかるとでも思っているかのように、遠巻きに避けて通った。


フレッドとジョージにとって、ホグワーツがパニックの渦に飲み込まれている今こそ、絶好の“出番”だった。


ハリーが廊下を歩くたび、双子はどこからともなく現れ、ぴたりとその前に立ちはだかる。


「したーに!下〜〜に〜!」

フレッドが、思いきり芝居がかった声で叫ぶ。


「スリザリンの継承者様のご通行であるぞ〜〜!」

ジョージはというと、わざわざローブのすそをつまみ上げ、ハリーの前を先導しながら行進を始めた。


「道を開けい!下々の者よ!このお方は今宵、“血に飢えた闇の扉”をお開きになるのだぞ!」


チユは苦笑しながらも、内心どこかホッとしていた。
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