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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第10章 決闘クラブ、開催



「ハリーが蛇をけしかけてる!」


誰かが叫んだ。そう聞こえた瞬間、大広間の空気が一変した。

――ピシッと音がするほどに。


「ち、ちがっ……!」


思わず声を出しかけたけれど、チユの喉がすぐにつまった。



だって、確かに――ハリーは、何かを蛇に向かって“喋って”いた。声に出して、確かに何かの“言葉”を。


だけど、それは聞いたことのない、不気味な、異国の、異様な響きだった。



「ハリー……?」

隣でロンがぽつりと呟いた声が、異様に遠く聞こえた。



蛇は、ハリーの言葉に反応したのか、鎌首を引っ込めて、大人しくなった。

でも――誰も、その“結果”を見てくれなかった。



みんなが見たのは、ハリーが蛇に語りかけ、ジェスチャーひとつで黙らせたという、不気味な「力」のような何かだった。



「……行こう。さあ、来て……」



ロンの声は、いつになく真剣だった。


ハリーの肩にそっと手を置き、ロンは彼を壇上から引き離した。ハーマイオニーもすぐに後を追い、チユもためらわずについていく。
4人が通ると、まるで結界でも張られたかのように、生徒たちの列がさっと割れた。


ハリーはその“間”を、ひどく静かな足音で歩かされた。



(まるで……避けられてるみたい)


そのまま、グリフィンドール塔の談話室へ向かう長い階段を、誰もしゃべらずに歩きつづけた。

ようやく人気のない談話室へたどり着くと、ロンがハリーを肘掛け椅子に座らせた。


「…で?」

ハリーは眉をひそめたまま、ロンとハーマイオニー、そしてチユの顔を順に見た。

ロンは一呼吸おいてから、ようやく言った。


「君は――パーセルマウスなんだ」

「…僕が、なに?」

「パーセルマウス、君は蛇と話せる人間だよ!」


その言葉を聞いた瞬間、チユはぽかんと口を開けて固まった。



「そうだよ」と、ハリーが答えた。


「でも……これで2度目なんだ。動物園でさ。昔、蛇に話しかけてたことがあるんだ……」


ハリーは、苦笑いを浮かべた。どこか、自分でも信じられないような顔だった。


「その蛇が、“ブラジルなんて1度も行ったことがない”って僕に話しかけてきてさ。僕、そんなつもりなかったのに、その蛇を逃がしてやっちゃったような感じになってて……。まだ魔法使いだって知らなかった頃の話だけど」

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