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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第10章 決闘クラブ、開催



「いくよ、ロン……!」

「えっ、もう? ちょっと待って――」

「インカーセラス!」


チユの杖から、するすると細い縄が飛び出し、ロンの体をあっという間にぐるぐる巻きにした。あっけないほど鮮やかだった。


「うわっ!? ちょ、ちょっと待って、これ――手も足も!」

「大丈夫、後でちゃんと解いてあげるから……たぶん!」

「“たぶん”って言うなー!」


大広間は、もう決闘クラブというより、ちょっとした騒乱の渦だった。


あちこちから「ギャアッ」「ちょ、待って!」と悲鳴や怒号が上がり、すでに杖を投げ捨てて殴り合いになっている組すらいた。


「こっ、これは……」ロックハートがポカンと口を開けた。


見るに見かねたスネイプが、黒いローブをひるがえして生徒の群れに飛び込む。
次々に呪文を打ち消し、手際よく暴走したペアを引き離していった。


「えー……! どうやら、非友好的な呪文を防ぐ術から始めたほうがよさそうですね!」


その場の騒乱を見てすっかり固まっていたロックハートは、スネイプのほうにちらりと目をやる。
だがスネイプは、光を反射するような鋭い視線を返したかと思うと、プイッと横を向いてしまった。


「では……!」ロックハートが手を振りながら叫ぶ。「誰か、代表して模範演技をしてくれるペアはありますか?」


「マルフォイとポッターはどうかね?」


スネイプが口の端を冷たく吊り上げた。


「それは名案!」ロックハートがすかさず乗っかる。

「さあ、マルフォイ君、ポッター君、どうぞ中央へ!」


ハリーとマルフォイが呼ばれ、大広間の中心が再びざわめいた。
緊張と期待が入り混じるなか、マルフォイは鼻で笑いながら舞台に向かい、ハリーは小さく息をついてその後を追った。


「さあ、ハリー。マルフォイが君に杖を向けたら、こういうふうにしなさい」


ロックハートは、自信満々で杖を高々と振り上げ、腕をくねらせてぐるぐると回し、なぜかそのまま勢い余って杖をポーンと落とした。


「あっ……おっとっと……私の杖はちょっと張り切りすぎたようですね!」


慌てて床にしゃがみ込み、杖を拾い上げるロックハートを見て、スネイプは唇の端をゆがめて笑った。
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