第10章 決闘クラブ、開催
「スネイプ先生、確かに、今の術をお見せになったのは結構です。ただ、ですね……」
ロックハートが胸を張って続けた。「“見せたい”気持ちが前に出すぎていて、読めてしまってましたよ、先生」
ロックハートは自信たっぷりに胸を張る。
が、その隣で、スネイプのこめかみに静かに浮き上がる青筋を、チユは見逃さなかった。
スネイプの目がロックハートの背中に突き刺さっていた。
下手をすると、今すぐもう一発“武装解除”ならぬ“拳”が出てもおかしくない雰囲気だ。
チユはごくりとつばを飲み込む。
(ロックハート……この先、生き残れるかな)
場の空気が凍りかけていたが、ロックハートはまったく気づいていない様子で続けた。
「ともあれ、生徒のみなさんには貴重な体験になったはずです。さて、次はペアになって練習してみましょう!」
ロックハートが宣言すると、生徒たちがざわつきはじめる。
そこへ、ゆっくりとスネイプが動いた。まるで狙い澄ました獲物を選ぶように。
「どうやら、名コンビもお別れのときが来たようだな」
ハリーとロンの間に割って入りながら、スネイプが言う。
「ポッターは――マルフォイと組みたまえ。かの有名なポッターをどう料理してくれるか、見ものだ」
マルフォイはニヤニヤしながら前へ出てきた。
ハリーが「嘘でしょ…」と呟くのが聞こえた。
そして――
「君、ミス・クローバーはウィーズリーと組みたまえ」
スネイプの声が、さらさらと冷えた水のように降ってきた。
「えっ、ロンと!?」
「ぼ、僕と!?」
声を合わせて叫んだチユとロン。周りでくすくす笑いが広がる。
「対戦相手として、だ。……友情が通用すると思わないことだな」
チユはスネイプの意地悪げな笑みに口をとがらせた
「でも……まぁ、ロンとなら、いいか……」
「それ、どういう意味?」
「安心って意味!」チユはぱっと笑って杖を構える。
「おいおい、何があっても不意打ちとか――なしだぞ?」
「そんな事しないよ!……たぶんね」
「おしゃべりはそこまで!」
壇上からロックハートが朗々とした声で言った。
「さあ!準備!杖をかまえて――礼!」
チユとロンは、視線を合わせたままぎこちなく頭を下げた。
お互い、どこか笑ってしまいそうな顔だった。