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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第10章 決闘クラブ、開催



「スネイプ先生、確かに、今の術をお見せになったのは結構です。ただ、ですね……」
ロックハートが胸を張って続けた。「“見せたい”気持ちが前に出すぎていて、読めてしまってましたよ、先生」


ロックハートは自信たっぷりに胸を張る。
が、その隣で、スネイプのこめかみに静かに浮き上がる青筋を、チユは見逃さなかった。


スネイプの目がロックハートの背中に突き刺さっていた。
下手をすると、今すぐもう一発“武装解除”ならぬ“拳”が出てもおかしくない雰囲気だ。

チユはごくりとつばを飲み込む。



(ロックハート……この先、生き残れるかな)



場の空気が凍りかけていたが、ロックハートはまったく気づいていない様子で続けた。


「ともあれ、生徒のみなさんには貴重な体験になったはずです。さて、次はペアになって練習してみましょう!」


ロックハートが宣言すると、生徒たちがざわつきはじめる。
そこへ、ゆっくりとスネイプが動いた。まるで狙い澄ました獲物を選ぶように。


「どうやら、名コンビもお別れのときが来たようだな」
ハリーとロンの間に割って入りながら、スネイプが言う。



「ポッターは――マルフォイと組みたまえ。かの有名なポッターをどう料理してくれるか、見ものだ」


マルフォイはニヤニヤしながら前へ出てきた。
ハリーが「嘘でしょ…」と呟くのが聞こえた。



そして――


「君、ミス・クローバーはウィーズリーと組みたまえ」
スネイプの声が、さらさらと冷えた水のように降ってきた。


「えっ、ロンと!?」

「ぼ、僕と!?」


声を合わせて叫んだチユとロン。周りでくすくす笑いが広がる。



「対戦相手として、だ。……友情が通用すると思わないことだな」



チユはスネイプの意地悪げな笑みに口をとがらせた



「でも……まぁ、ロンとなら、いいか……」

「それ、どういう意味?」

「安心って意味!」チユはぱっと笑って杖を構える。



「おいおい、何があっても不意打ちとか――なしだぞ?」


「そんな事しないよ!……たぶんね」



「おしゃべりはそこまで!」
壇上からロックハートが朗々とした声で言った。


「さあ!準備!杖をかまえて――礼!」


チユとロンは、視線を合わせたままぎこちなく頭を下げた。
お互い、どこか笑ってしまいそうな顔だった。
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