第10章 決闘クラブ、開催
「では、我が助手スネイプ先生をご紹介しましょう!」
紹介されたスネイプは、舞台の端で蛇のような目つきでこちらを睨んでいた。
まるで“なんで俺がこんな茶番に付き合わなきゃならんのだ”と言わんばかりの顔。
「決闘について少しばかり心得があるそうです!」
チユは最前列にハリーたちと並んで座っていた。
スネイプの顔を見た瞬間、ロックハートがどれだけ無邪気なのか、少し心配になった。
「今から、スネイプ先生と模範演技をお見せします!みなさん、ご安心を。私が勝ったあとでも、ちゃんとスネイプ先生は形を保っていますから!」
「相討ちで、両方やられっちまえばいいと思わないか?」
ロンがハリーの耳にささやいた。
2人は向かい合い、礼を交わした――と言っても、ロックハートのそれは観客へのファンサービスのような派手なもの。
一方のスネイプは、無言で顎をカクンと下げただけだった。
明らかにやる気がない。だが、目だけはギラギラしている。
チユは緊張で指を組んだまま、そっと息をのんだ。
「では、始めましょう。3つ数えて――」
「1、2――」
その瞬間、スネイプが鋭く杖を振り上げた。
「エクスペリアームス!」
乾いた音とともに、鮮やかな赤い光がロックハートに直撃。
次の瞬間、ロックハートは空中でぐるぐると宙返りしながら吹き飛ばされ、金の舞台の向こう側にどさっと落ちた。
「――3……って、言う前に飛んだ……!」
チユは呆然としながらも、笑いをこらえるのに必死だった。
ハーマイオニーは両手で顔を覆い、その指の隙間から震える声をもらした。
「せ、先生……だ、大丈夫かしら……」
「知るもんか!」
ハリーとロンが、迷いなく声を揃えて返した。
壇上では、ロックハートがふらふらと立ち上がっていた。
くるんと巻いた髪は見事に爆発して、まるで孔雀のしっぽのように広がっている。
それでも――どこまでも前向きなのが彼という人間だった。
「さあ、みなさん、これでわかりましたね!」
よろよろと壇上に戻りながら、ロックハートは両腕を広げた。
「今のが、『武装解除の術』です! 私は、見事に杖を失いました――ありがとう、ミス・ブラウン」
観客席の中ほどから、ラベンダー・ブラウンがそそくさと杖を拾い上げて差し出した。