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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第10章 決闘クラブ、開催



「うわ、何これ……劇場か何か?」

大広間に足を踏み入れると、チユが思わずぽつりとつぶやく。


食事用の長テーブルはすっかり取り払われ、部屋の一方にはきらびやかな金の舞台が出現していた。
天井には無数のろうそくがゆらめき、その舞台を照らす。下には、生徒たちが集まり、杖を握ってワクワクとそわそわの混じった顔をしている。


「いったい誰が教えるのかしら?」


ハーマイオニーが言いながら、生徒たちの波をかき分けて進む。
チユもそのすぐ後ろをついて歩いていたが、すれ違いざまに誰かの肘がぶつかり、「うぐっ」となった。


混雑の熱気で、なんだかホグワーツじゃなくて魔法サーカスの会場みたいだった。


「誰かが言ってたわ。フリットウィック先生って、若い頃、決闘チャンピオンだったんですって。たぶん、きっと彼よ」


「うん、誰でもなんでもいいよ……あいつじゃなければね」
ハリーがぼそっと言いかけて、でもその言葉は途中で止まった。


なぜなら――


「………げっ」


ローブのきらめきとともに、ロックハートが金の舞台に優雅に現れたのだった。
深紫のローブはまぶしく、満面の笑顔。
後ろには、対照的に真っ黒で不機嫌なスネイプ先生が、ものすごく面倒くさそうな顔でついてきている。


チユは一瞬で悟った。


(……これは、事故の予感)


「静粛に!静粛に、みなさん!私がよく見えますか?声、聞こえてますか?ええ、結構、結構!」
ロックハートは、まるで司会者のように、片手を軽く上げてみせた。


「ダンブルドア校長から正式に許可をいただきまして、私ギルデロイ・ロックハートが、この小さな決闘クラブを率いることになりました!」


「小さくはないだろ、これ……」
ロンがぽそっと言ったのを、チユは聞き逃さなかった。


「さて、自らを守るためには、日頃の訓練が不可欠です!」
ロックハートの声が、金の舞台から高らかに響く。手にはお決まりの自著を掲げていた。
「私がそれを、直々にお教えしましょう! 詳しくは、私の著書『ロックハートの守りの魔法100選』をお読みください。サインも差し上げますよ!」


「もう帰ってもいいかな……」


思わずぽつりとつぶやいたその声に、すぐ横からピシャリとハーマイオニーのツッコミが飛んできた。


「まだ何も始まってないわよ」

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