第10章 決闘クラブ、開催
4人は、廊下を急ぎ足で戻っていた。
向かう先は、いつもの女子トイレ。
チユは、走るたびに背中のローブがばさばさとなびくのが気になって、そっと手で押さえながらついていく。
「スネイプは僕がやったって思ってるよ、絶対にバレてる」
前を歩くハリーが、ややうつむきがちに言った。
「でも証拠はないわ。私たち、完璧だったもの」
ハーマイオニーは自信満々だったが、大鍋に向かうとすぐに目の色を変えた。火を起こし、新しい薬草の束を放り込み、ふたを外してかき混ぜ始める。
表情は真剣そのもの。
「証拠がいなら、あいつに何ができるってんだ?」
ロンが、ハリーの肩をぽんと叩いてみせた。
「いや、相手はスネイプだよ。証拠も魔法でねじ曲げるかも」
ハリーが唸るように言ったちょうどそのとき、大鍋の中から、ブクブクッ、ブシュー!と勢いよく泡が立ち、辺りに奇妙な匂いが漂った。
「わっ、タマネギと……石けんと……汗みたいな匂いがする……」
チユが小声でつぶやいたが、誰にも拾われなかった。
1週間後の午後。ホグワーツの玄関ホールはいつもよりざわついていた。
「なんか、掲示板の前に人だかりできてるぞ」
ロンが目を細める。
人波をかき分けて近づくと、シェーマス・フィネガンとディーン・トーマスが興奮気味に手招きしてきた。
「決闘クラブだってよ!初回は今夜!ほら見ろよ、ここ!」
羊皮紙には大きく、装飾的な文字でこう書かれていた
『決闘クラブ・開幕
本日20時、大広間にて初回開催!』
「え?スリザリンの怪物と決闘できるの?」
チユが首をかしげると、
「できたらもう、全員ヒーローだな」
とロンが茶化す。
「でも、役には立つわ。防御魔法の練習なんて、ちゃんとした場でやったことないし」
ハーマイオニーが真面目に言うと、
「うん、行こう」
ハリーも即答した。
その夜、4人は夕食を早めに済ませると、そそくさと大広間に戻ってきた。