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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第10章 決闘クラブ、開催



「なにをしている、貴様らは……!静まれ!!」


スネイプの怒鳴り声が、地下牢の空気を裂いた。
ドスドスと床を踏み鳴らすように、スネイプが前に出る。


「薬を浴びた者は、こちらへ来い。ペシャンコ薬を渡す。してこの騒ぎが誰の仕業か明かしたあかつきには……」


すると――

ズルズルとマルフォイが前へ出てきた。頬が、小さなメロンのようにふくれ上がり、その重みでうなだれている。チユは思わず口を押さえた。


しかし笑ってはいけない。
ここで笑えば、スネイプの眼光がこちらに飛んでくる。まるで魔法より恐ろしい拷問だ。


スネイプの指示に従って、クラスの半分ほどの生徒が、ふらふらと教壇の前に集まっていく。


誰かは棒のような腕をだらんとさげ、誰かは腫れ上がった舌で言葉にならない呻き声をもらしていた。
まるで魔法薬の人体実験でもした後のようだ。



チユは薬鍋のかげに身を寄せたまま、スネイプの視線が逸れているのを確認してから、こっそり入り口の方に目をやった。


そして――


ハーマイオニーが、するりと、誰にも気づかれずに戻ってきた。

ローブの前のあたりが、ほんの少し不自然に膨らんでいる。
その胸の内に、たしかに成功の手応えがあるような――そんな気がして、チユはほっと息をついた。


スネイプが怒鳴りながら、ゴイルの大鍋のそばにしゃがみ込むと、底のあたりをごそごそと探りはじめた。


そして――黒こげの、縮れた花火の燃えかすをすくい上げた。
その眉が、ゆっくりと、いやな角度で釣り上がっていく。



心臓が、ドクン、と一拍跳ねた。

「これを投げ入れた者が誰かわかったあかつきには」スネイプが低い声で言った。「我輩が、そやつを退学にさせてやる」


チユたちは、いったい誰なんだろうという表情を取りつくろった。


それから10分後に鳴った終業ベルは、いつも以上にありがたかった。

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