第10章 決闘クラブ、開催
「なにをしている、貴様らは……!静まれ!!」
スネイプの怒鳴り声が、地下牢の空気を裂いた。
ドスドスと床を踏み鳴らすように、スネイプが前に出る。
「薬を浴びた者は、こちらへ来い。ペシャンコ薬を渡す。してこの騒ぎが誰の仕業か明かしたあかつきには……」
すると――
ズルズルとマルフォイが前へ出てきた。頬が、小さなメロンのようにふくれ上がり、その重みでうなだれている。チユは思わず口を押さえた。
しかし笑ってはいけない。
ここで笑えば、スネイプの眼光がこちらに飛んでくる。まるで魔法より恐ろしい拷問だ。
スネイプの指示に従って、クラスの半分ほどの生徒が、ふらふらと教壇の前に集まっていく。
誰かは棒のような腕をだらんとさげ、誰かは腫れ上がった舌で言葉にならない呻き声をもらしていた。
まるで魔法薬の人体実験でもした後のようだ。
チユは薬鍋のかげに身を寄せたまま、スネイプの視線が逸れているのを確認してから、こっそり入り口の方に目をやった。
そして――
ハーマイオニーが、するりと、誰にも気づかれずに戻ってきた。
ローブの前のあたりが、ほんの少し不自然に膨らんでいる。
その胸の内に、たしかに成功の手応えがあるような――そんな気がして、チユはほっと息をついた。
スネイプが怒鳴りながら、ゴイルの大鍋のそばにしゃがみ込むと、底のあたりをごそごそと探りはじめた。
そして――黒こげの、縮れた花火の燃えかすをすくい上げた。
その眉が、ゆっくりと、いやな角度で釣り上がっていく。
心臓が、ドクン、と一拍跳ねた。
「これを投げ入れた者が誰かわかったあかつきには」スネイプが低い声で言った。「我輩が、そやつを退学にさせてやる」
チユたちは、いったい誰なんだろうという表情を取りつくろった。
それから10分後に鳴った終業ベルは、いつも以上にありがたかった。