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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第9章 英雄と狂ったブラッジャー



ようやく水を飲み終えたハリーは、ぐったりと枕に沈み込みながら言った。


「とにかく……僕たちは勝ったんだよね」


ロンの顔が一気に明るくなった。


「勝ったよ!すっっごいキャッチだったぞ、あれ!最後のダイブ、マルフォイの顔ったら……最高だったな!」

「ていうか、あのブラッジャーに、マルフォイがどうやって細工したのか知りたいわね……!」ハーマイオニーが険しい顔でつぶやく。


「質問リストに加えておくといいよ」
ハリーが枕に顔を埋めながらぼそっと言った。
「ポリジュース薬を飲んで、スリザリン生に化けたときに聞く質問にさ……」



「その薬の味が、さっきのよりマシだといいんだけど……」
ハリーがぽつりとつぶやくと、


「スリザリンの連中のかけらが入ってるのに?冗談言うなよ」
ロンが即ツッコミを入れた。


――そのときだった。

バンッ!

医務室のドアが勢いよく開き、びしょぬれで泥だらけのグリフィンドール選手たちが、次々と駆け込んできた。


「ハリー!!」

「生きてるか!? すごかったぞ!!」


ハリーのベッドの周りにどっと人が集まり、空気が一気に明るくなる。
選手たちの顔には、泥だらけでもはっきりわかる笑顔と、誇らしさがにじんでいた。

チユ、ロンとハーマイオニーは少しだけ後ろに下がって、それを見ていた。
ハリーはたしかに危ない目にあった。
でも、それだけのものをみんなに残していったんだ。そう思うと、なんだか胸がぎゅっとあたたかくなった。

そして彼女はそっと、心の中でつぶやいた。


(ほんとに……かっこいいよ、ハリー)


そのうち、誰かが持ってきたケーキの箱が開き、かぼちゃパイやチョコチップクッキー、バタービスケットが次々と広げられ、かぼちゃジュースの瓶まで配られ始めた。


「パーティかよ……」
ロンが言いながら、しれっとビスケットを手に取る。


ハリーのベッドの周りは、まるで寮の談話室みたいな賑わいに。
ただひとつ違ったのは、中央にいる“英雄”が、片手でクッキーをつかむのに四苦八苦していたこと。


と――

ドン! ドン! ドン!


怒りの足音が近づき、医務室のドアがもう一度、開いた。
現れたのは、マダム・ポンフリー。ポケットには包帯がぎっしり詰まっている。
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