第9章 英雄と狂ったブラッジャー
ロンは口を閉じ、ハリーは黙ってうなずいた。
「規則を破れなんてさ、君が言う日が来るとは思わなかったぜ」
ロンが呆れたように言った。でも、なんだかちょっと嬉しそうでもある。
「……わかったよ。やるよ。でも、足の爪だけはマジで勘弁してくれよな? いいか?」
チユが心の中でそっと同意していると、ハーマイオニーが機嫌を直したように、もう一度本を開いた。
そのタイミングで、ハリーが遠慮がちに聞いた。
「で、作るのにどれくらいかかるの?」
「そうね……」
ハーマイオニーは真剣な顔でページをめくりながら言った。
「満月草は満月の夜に摘まなきゃいけないし、クサカゲロウは21日間煎じ続ける必要があるの。それに、他の材料も揃ってれば……そう、だいたい1か月ぐらいかかるわね」
「1か月も!?」
ロンが目をまん丸にして叫んだ。
「その間にマルフォイが学校中のマグル生まれを半分くらい襲っちゃうぞ!」
ハーマイオニーの目がまたじわじわと吊り上がってきたのを見て、ロンもさすがにヤバいと察したようだった。
「あ、でもでも!」
慌てて言い足すロン。
「現時点ではそれが最善の計画だと思うよ!うん!全速前進だな!僕たち!」
その後、4人はこそこそとトイレを出る準備をし、ハーマイオニーが扉のすき間から誰もいないことを確認している間に、ロンがそっとハリーの耳元でささやいた。
「なあ、明日、君がマルフォイを箒からたたき落とせば、全部手間省けるんだけどな」
「それ、ちょっと見てみたいかも」チユがくすっと笑った。