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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第9章 英雄と狂ったブラッジャー



ハーマイオニーは紙を受け取ると、もたもたしながらそれを丸め、鞄に滑り込ませる。

その間に、ロックハートはハリーに顔を向けた。


「で、ハリー。明日はシーズン最初のクィディッチの試合だね? グリフィンドール対スリザリン。君はなかなか有望な選手だって聞いてるよ」


「は、はあ……」


「私もね、かつてはシーカーだったんだ。ナショナル・チーム入りの誘いも受けたものさ! だが私は、闇の魔力を根絶するという使命に人生を捧げる道を選んだ。だがもし軽く個人レッスンが必要なら、いつでも呼んでくれたまえ。君のような選手には、ぜひ私の経験を伝えたいからね!」


「え、あ……ど、どうも……」

ハリーは喉の奥からあいまいな音を出すと、そそくさと4人は教室を出た。



「……信じられないよ、僕たちがなんの本を借りるのか、見もしなかった」
図書館へ向かいながら、ハリーがやや呆れ顔で言った。


「ほんとに自分のことしか見えてないんだから」ロンは首を振る。


「むしろ、サインしたくてウズウズしてたよね。きっとあの羽根ペンを見せびらかしたかったんだよ」チユがぽつりと口を挟んだ。


「それでも、ちゃんと借りられるんだから結果オーライよ」ハーマイオニーが胸を張る。

「ロックハートに、学年で最優秀生って言われたからって、ちょっと浮かれてない?」

「浮かれてないわよ!」ハーマイオニーはちょっとだけ顔を赤らめた。


図書館に入ると、一行は一気に声をひそめた。そこにはマダム・ピンスの冷たい空気が漂っていた。
痩せぎすで怒りっぽく、まるで飢えたハゲタカのような司書だ。


「『最も強力な魔法薬』?」マダム・ピンスは疑わしげに眉をひそめ、ハーマイオニーの手から許可証を取ろうとした。


だが、ハーマイオニーは紙を渡そうとしない。


「こ、これ、私が持っていてもいいでしょうか……?」息を弾ませながら聞く。

「やめときなよ」ロンが小声で言って、ハーマイオニーの手からすっと紙を奪い取った。

「はい、先生。サイン、ちゃんとしてます。ロックハートですからね、サインするってだけなら、止まってるものにでもしちゃう人です」


マダム・ピンスは眉を吊り上げたまま、紙を光に透かして厳しく検査した。


全員が内心ドキドキしていたが――
彼女はついにツンと背を伸ばし、奥の書棚へとすっと歩いていった。
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