第8章 血文字の警告
「心配してるのは、ジニーのことじゃないだろ!」
ロンが叫んだ。
「君が首席になるチャンスを、僕が台無しにするんじゃないかって、それが怖いだけだ!」
パーシーの顔がビクッと震えた。
そして――
「グリフィンドール、5点減点!」
パーシーはカッと目を見開き、バッジを指でピッと弾いた。
「いい薬になるだろう。探偵ごっこはここでおしまいだ。でないと、ママに手紙を書くからな!」
言い捨てると、怒りで顔を真っ赤にしたまま、足音高く去っていった。
その背中を、ロンはしばらくのあいだ目で追っていた。
「……あれはもう、完全にモリーおばさんが憑依してたね」
チユがぽつりとつぶやくと、ロンの怒った顔が、ちょっとだけ緩んだ。
その夜、グリフィンドールの談話室。
4人は、できるだけパーシーから離れたソファに集まり、呪文学の宿題を広げていた。……が、ロンはまだ機嫌が直っておらず、羊皮紙にはインクのシミばかりが増えていく。
「くっそ、またにじんだ……!」
ロンがぼやいて枕を手繰り寄せた瞬間、ぼっと小さく火が上がり、宿題が燃えた。
「わあ!?何やってるのロン!」
チユが慌てて呪文で火を消して、一件落着。
ロンは赤くなった顔のまま、「基本呪文集(2年生用)」を勢いよく開いた。
その横で、ハーマイオニーも同じように教科書を開く。
なんだかんだで、ロンのことは気になるらしい。
「で、いったい誰が“あれ”をやったんだろう」
ハーマイオニーが宿題を閉じながら言った。
「“あれ”って、ミセス・ノリスのこと?」チユが聞き返すと、ハーマイオニーは小さく頷いた。
「スクイブやマグル生まれの子を追い出したいって思ってるのは、いったい誰なの?」
「はい、ここでクイズです」
ロンが芝居がかった声で言う。
「マグル生まれが大嫌いで、“穢れた血”って言葉を使うくらい最低なヤツといえば、だーれだ?」
「……まさか、マルフォイ?」
チユが眉をひそめると、ロンは満面のどや顔。
「モチのロンさ!」
「……やかましい」
「でも、マルフォイが“スリザリンの後継者”って……」
ハーマイオニーが、いかにも信じがたいという顔で言った。
「“次はお前たちだぞ、穢れた血ども!”って、あいつが叫んでたの聞いたろ? あれ、どう考えても自白じゃん!」