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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第8章 血文字の警告



「ロン!」


女子トイレを出ると、突然大きな声が響いた。


階段のてっぺんには、まるで監督生ポーズの見本のように直立したパーシー・ウィーズリーの姿があった。
胸のバッジはぎらりと光り、顔は衝撃でこわばっている。


「そこは女子トイレだぞ!」
パーシーが呆れたように息を飲んだ。


「君たち男子が……いったい何をしていたっていうんだ!?」


「ちょっと探してただけだよ」
ロンは肩をすくめて、なんでもないって顔を作った。
「ほら、手がかりをね。事件の」


「手がかり!?」
パーシーの肩がぐっと持ち上がった。チユとハリーは、まるでスチームが出そうなその姿を、そっと一歩引いて眺めた。



(……今の顔、モリーおばさんそっくり)
チユは密かに思った。ウィーズリー家の血は濃い。



「さっさとそこから離れろ!」
パーシーは大股で迫ってきて、まるで追い払うように手を振り回した。


「人に見られたらどう思われるかわからないのか? 女子トイレだぞ!?みんなが夕食を取ってる時間に、またここに――」


「なんで僕たちがここにいちゃいけないんだよ!」
ロンが急に立ち止まり、パーシーを真っ向から睨んだ。



その目には、はっきりとした怒りが宿っている。



「僕たち、あの猫に指一本触れてない!何もしてないんだ!」



パーシーの顔が一瞬ぴくりと動いた。
でも次に出てきたのは、意外にも怒りではなかった。



「……僕も、ジニーにそう言ってやったよ」
パーシーの声はほんの少しだけ、やわらかくなっていた。
「それでも君たちが退行処分になると思って目を真っ赤にして泣いてたんだ。兄として、あんなジニーを見るのはつらい」



チユはその言葉に、思わず胸がきゅっとした。



(ジニー、そんなに……)


「少しは、あの子のことも考えてやれ。今、1年生たちはみんな神経をすり減らしてる。怖がってるんだ」
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