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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第8章 血文字の警告




「……あいつら、生きてると動き方がやだ。……こう、にょろってしてて……足が多すぎて……なんか、ああ、もう……!」


ロンは鳥肌を立ててぶるぶると身を震わせた。
チユは思わず顔を背けながらも、ちょっと笑いをこらえきれなかった。


「理由があるんだよ! 」
ロンがむきになって言い返す。


「僕が三歳のときさ、フレッドが僕のおもちゃの箒を壊されたって怒って――テディ・ベアを……バカでかい大グモに変えやがったんだ!」


チユとハーマイオニーが思わず同時に「ひどっ」と声を上げた。


「考えてもみてよ! 抱っこしてたぬいぐるみにさ、急に脚が8本ニョキニョキって……! トラウマになるに決まってるだろ!」


ロンは完全に早口になっていた。
顔も耳も真っ赤で、怒りと恥ずかしさがないまぜになっている。



ハリーはそれを見て「話題変えよう」と判断したらしい。視線を床に戻して言った。


「……ねえ、水たまりのこと、覚えてる? あの夜、床が濡れてた」

「誰かが拭いちゃったみたいだけど、私、転けそうになったもん」
チユもうなずいた。



ロンはようやく落ち着きを取り戻したのか、フィルチの置いていた椅子のあたりを指差して言った。


「このへんだった。ドアの前、ここ……」


ロンは、扉の取っ手に手を伸ばしかけて――


「うわっ」と言って、まるで火に触ったみたいにバッと手を引っ込めた。


「どうしたの?」ハリーが首をかしげる。

「ここ……女子トイレだ」
ロンは小声で言った。声に微妙な震えがあるのが、なんだか可笑しい。


「中には誰もいないわよ。そこ、“嘆きのマートル”のトイレだもの。有名でしょ? 入っても怒られないわ」ハーマイオニーが言った。


「でも女子トイレに入るのって、なんか罪深い気がする……」
ロンはまだ小さく抵抗していた。


そんなやり取りの中、ハーマイオニーはすでに扉に手をかけていた。
ドアには『故障中』と大きく書かれたプレートがぶら下がっていたが、まったく気にせず、そのまま中へ。
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