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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第8章 血文字の警告



人波にまぎれて階段へ向かう途中、目の前から小柄な男の子がぱたぱたと走ってきた小柄な姿が声をかけてきた。


「やあ、ハリー!」


コリン・クリービーだった。


「やぁ、コリン」
ハリーは反射的に答えたが、その目はうんざり気味だった。


「ハリー、僕のクラスの子が言ってたんだけど、あなたって……」
と続けようとしたが、次の瞬間、コリンは背の高い上級生たちに押し流され、大広間の方へ吸い込まれていった。


「あとでね、ハリーー!」
叫び声だけが残った。


「クラスの子が、あなたのこと何て言ってたのかしら?」
ハーマイオニーが眉を寄せてつぶやく。


「たぶん、僕がスリザリンの継承者だって……言ってたんじゃない?」


「ほんっと、ここって噂好きの集団だよな」
ロンが肩をすくめて言った。



混雑も少し落ち着き、4人は次の階段へ向かって歩き出した。



「『秘密の部屋』があるって……ほんとうに、そう思う?」ロンがふいに口を開いた。


夕方の廊下。誰もいない静けさの中で、その声は妙に重たく響いた。


「わからないけど……」
ハーマイオニーは歩きながらも眉間にしわを寄せ、真剣な顔をしていた。


「でもね、あの夜、ダンブルドアでもミセス・ノリスをすぐに治せなかった。つまり、猫を襲ったのは、もしかしたら人間じゃないかもしれない」



そのときだった。4人はちょうど角を曲がり、あの“事件現場”の前に出た。


一歩、二歩と足が自然に止まる。
チユはつい、手を胸元に寄せて息をひそめた。


夜に見たあの光景――冷たい石の床に流れていた水の音、ぶら下がったミセス・ノリス、血のような赤で書かれた言葉……すべてが頭の奥から這い上がってくる。


今はもう猫の姿はなく、代わりに小さな木製の格子が壁の前にぽつんと置かれているだけだった。
それでも、あのときの気配が――残っているような気がした。


壁の文字は、まだはっきりと残っていた。



『秘密の部屋は開かれたり』



チユは思わず喉を鳴らした。石の壁ににじむその赤は、まるで今も消えることなく警告を発しているようだった。
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