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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第8章 血文字の警告



チユたちは、ロックハートの部屋から逃げるように階段を駆け上がり、人気のない教室の扉をそっと閉めた。

誰もいない。暗い教室に、4人分の呼吸だけが静かに重なった。


しばらく、誰も喋らなかった。
床に沈むように腰を下ろすと、チユの指先は冷たくて、膝の上でじっと震えていた。


ハリーがぽつりと口を開いた。


「……あの声のこと、話すべきだったと思う?」


チユは息を止めた。
ロンがすぐに答える。


「いや、やめたほうがよかった。ああいうの……魔法界じゃ、頭がおかしくなった前兆だと思われる」


その言い方があまりにあっさりしていて、チユは少し目を伏せた。
だけど、ハリーは真剣にロンを見ていた。


「君は、信じてくれてるよね?」

ロンは、はっとした顔で言葉を繋ぐ。


「もちろんだよ。信じてる。だけど…」
少し言いにくそうに、言葉を続ける。

「ちょっと……気味が悪いよな」


ハリーの肩が、ほんのわずか落ちた。
チユはそっと、床のほこりを指でなぞりながら思った。


――ハリーには誰にも聞こえない"声"が聞こえる。
それはどんなに孤独で、怖いだろうか。


「ところでさ、あの壁の文字。『部屋は開かれたり』って……何のことなんだろう?」ハリーが首を傾げる。


するとロンが急に思い出したように手を叩いた。


「そうだ! ビルが昔話してた! ホグワーツには“秘密の部屋”があるって。スリザリンが作ったとかなんとか……」


「えっ、そんなのが本当に……?」


チユが呟く。壁にうつる灯りのゆらめきが、彼女の顔に影を作っていた。


「多分ね」ロンは腕を組んでうなった。

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