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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第8章 血文字の警告



「僕たち、疲れたので……ベッドに行きたかっただけです」
しばらくの沈黙の後、ハリーがそう答えた。


「夕食も食べずにか?」
スネイプの頬がわずかに引きつり、冷たい笑みが浮かぶ。
「ゴーストのパーティで、生きた人間にふさわしい食べ物が出るとは思えんがね」


「僕たち、空腹じゃなかったんです」
ロンがあわてて言ったその直後――


ゴロゴロゴロ……
ロンのお腹が、見事なタイミングで音を立てた。


チユは思わず、手の甲で口を押さえる。
笑いじゃない。咄嗟に出た息を飲み込んだのだ。


でも、スネイプは見逃さない。



「ポッターがすべてを正直に話しているとは思えません。真実を語る気になるまで、相応の措置を取るべきかと。たとえば、クィディッチ・チームから外すなど」


その言葉に、チユは反射的に足を一歩前に出しかけた。
でも、マクゴナガル先生の声が、鋭く空気を切った。



「その必要は見当たりません。証拠はありませんから」


そして、ダンブルドアの静かな一言。



「疑わしきは罰せず、じゃよ、セブルス」


ようやく、空気が動いた。
でもフィルチは、まだその場に置き去りにされていた。


「うちの猫が石にされたんだ! ノリスが……!」


「アーガス、ミセス・ノリスは……治せますぞ」
ダンブルドアがやわらかく言う。


「スプラウト先生が育てているマンドレイクが充分に成長すれば、彼女を蘇生させる薬が作れるじゃろう」


「お任せください! 私にかかれば、マンドレイク回復薬など朝飯前です!」
ロックハートが朗々と名乗りを上げた。
「私など、100回は作りましたからね! 眠っていたってできますよ!」


「……おうかがいしますがね」
スネイプが冷たく返す。
「この学校の魔法薬学の担当は、あくまで私のはずですが」



――しん、とした。



チユはその空気の重さに、思わず足元を見つめた。
誰もが、口を開くべきか迷っていた。


「……帰ってよろしい」
ついに、ダンブルドアが口を開いた。


その瞬間、ハリーたち――そしてチユも、全員が待ってましたとばかりに立ち上がる。
走りはしなかったが、その一歩手前の速さで足を動かし、部屋を後にした。
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