第7章 死者たちの晩餐会
「ついてきて!」
ハリーは迷わず、大理石の階段をさらに駆け上がっていく。
「ハリー、いったい何を……」ロンが息を切らしながら言いかけると――
「シーッ!」
ハリーが振り返りもせず制した。
また耳を澄ませて、どこか遠くをじっと見つめている。
「誰かを殺すつもりだ!」
そう叫ぶと、ハリーは再び駆け出した。
ロンとハーマイオニーも戸惑いながら後を追う。
チユも、訳がわからないまま胸が苦しくなりながら、彼らの後をついて走った。
3階へと続く階段を、一段飛ばしで駆け上がりながら、ハリーはどこかから聞こえる“声”を追い続けているようだ。
廊下を何本も走り抜け、最後の角を曲がったときだった。
ハリーがぴたりと止まり、息を呑んだ。
「……ハリー……どういうこと?」ロンが肩で息をしながら問う。
チユは肩を抑えて、荒れる息を整えながらも、ハリーの視線を追って前を見つめた。
そのとき、ハーマイオニーが指をさした。
「見て……!」
廊下の突き当たりの壁に、赤黒い光を帯びた文字が浮かび上がっていた。
4人は松明の明かりのもと、ゆっくりとそれに近づいていく。
壁には、真っ赤な文字が血のように塗りつけられていた。
『秘密の部屋は開かれたり
継承者の敵よ、気をつけよ』
チユは思わず息を飲み、足を止めた。
「……下に、なにかぶら下がってる……」ロンの声が震えていた。
一歩、また一歩と近づく。
チユの靴が床の水たまりを踏み、すべりそうになった瞬間、後ろのロンが慌てて腕を支えた。
そして、4人が目を凝らす。
文字の真下、闇に沈むような影――
それが“何”なのか、誰もが一瞬で理解した。
フィルチの飼い猫、ミセス・ノリスだ。