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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第7章 死者たちの晩餐会



「みなさん、ご静粛に。一言、私からご挨拶を!」
ニックが壇上に上がり、青白い光の中で声を張り上げた。


「お集まりの、いまは亡き、嘆かわしき閣下、紳士、淑女のみなさま……ここに私、心からの悲しみをもちまして――」


だがその直後、パトリック卿たちが首ホッケーを始め、場の空気は一変した。観客の視線はそちらに奪われ、ニックの言葉はかき消されていく。

ニックは懸命に声を張ったが、パトリック卿の首が横を飛んで歓声が上がった瞬間、諦めたように口を閉じた。


チユは凍える足を踏み替えた。冷気が骨にまで染みてくるようで、もう限界だった。


「僕、もうがまんできないよ……」ロンがつぶやく。


亡霊たちがダンスを再開する頃には、チユたちの体はすっかり冷えきっていた。

「行こう」
ハリーの言葉に、誰からともなく頷き、4人は静かにその場を離れた。


通路を抜けて、ようやく黒いろうそくの並ぶ廊下へ戻る。ロンがぽつりとつぶやいた。

「デザート、残ってるといいな」


チユは無言でうなずいた。甘いものを想像するだけで、ほんの少しだけ気がゆるんだ気がした。


だがその瞬間、ハリーが急に立ち止まった。

チユは思わず背筋をこわばらせた。さっきの冷えとは違う、もっと深いところからの寒気が、ぞわりと背を這う。


「どうしたの……?」チユが声をかける。

「またあの声だ、ちょっと、黙ってて!」


ハリーは壁に手をつき、じっと耳を澄ませている。


「ほら、聞こえる!」


ハリーの焦った声に、ロンとハーマイオニーは息をのんだ。チユには何も聞こえなかったが、ただならぬ空気だけははっきり感じた。

ハリーが天井を見上げ、表情を強ばらせる。

チユも無意識に天井を仰いだ。何も見えない――けれど、そこに“何か”がいる気がした。

「こっちだ!」


ハリーが叫ぶと、駆け出した。ロンとハーマイオニーが慌てて後を追う。
チユも胸をぎゅっとつかまれたまま、その後に続いた。
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