第7章 死者たちの晩餐会
ハロウィーンの朝、ホグワーツはそわそわと浮き足立っていた。
廊下には黒と金のリボンが揺れ、大広間の壁には無数の生きたコウモリが舞っている。
ハグリッドが育てた巨大なかぼちゃはすっかりくり抜かれ、大きなランプとなって灯をともしていた。
チユは、あちこちで聞こえてくる飾りつけの歓声や、焼きたてのパンプキンパイの甘く香ばしい匂いに胸をときめかせていた。
「見た?大広間の入り口のカボチャ」
ハーマイオニーが誇らしげに言うと、チユはこくんとうなずいた。
「うん、ランプになってて、すごく綺麗だった」
「中に大人3人は入れるよな」
ロンがパンをかじりながら言い、口の端にジャムをつけたまま笑った。
朝食のあとは授業をこなしながらも、どこかそわそわしてしまう。
生徒たちは皆、今夜のハロウィーンのごちそうを心待ちにしていて、廊下のあちこちで「かぼちゃジュースの泉が出るかも」「百味ビーンズのタワーあるかな」などと賑やかな声が飛び交っていた。
ダンブルドア校長が、パーティの余興に「がいこつ舞踏団」を呼んだらしい――そんな噂も飛び交っている。
だが――
「絶命日パーティ、行くんでしょ?」
夕方、ハリーがやや気まずそうな顔をしているのを見て、ハーマイオニーがピシャリと言った。
「約束は約束でしょ。ニック卿がわざわざ招待してくれたんだから」
チユは、黙ってハリーの顔を見上げた。
ハリーは頬をかいて、ため息をひとつつく。
「わかってるよ。行くよ……。でも、あの大広間の飾りつけを見たらさ、つい……」
夜7時ちょうど。
ハリー、ロン、ハーマイオニー、そしてチユは、大広間の前を通り過ぎた。
ドアの隙間から漏れてくるのは、にぎやかな音楽と、甘いお菓子の匂い、そして楽しげな笑い声。
宙には大きなカボチャのランタンが浮かび、金の皿には色とりどりのごちそうが山のように盛られていた。
チユは、一瞬だけ立ち止まる。
あの明るさ、あのにぎやかさ、あの温かい空気に、心が吸い寄せられそうになる。
でもすぐに、ぐっと目を伏せて、みんなのあとを追いかけた。