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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第7章 死者たちの晩餐会



グリフィンドールの談話室は、外の冷たい雨とは無縁のように、暖かな明かりに包まれていた。
窓の外では墨を流したような空が、時折ごうごうと風に震えている。


けれど中では、火がぱちぱちと音を立て、厚い絨毯の上に散らばるひじかけ椅子には、生徒たちが思い思いに腰を下ろしていた。


チユはソファの端にちょこんと座っていた。

体がすっぽり沈んでしまいそうなふかふかの布に埋もれながら、膝に開いた本を見つめている。
けれど目は文字を追っていても、耳は、そばで始まったハリーの話に向いていた。


「でね、ほとんど首無しニックにさ、“絶命日パーティ”に誘われたんだ」


「絶命日パーティですって?」


ハーマイオニーの声が弾む。ロンは羊皮紙とにらめっこしながらうんざりした顔をしていたが、ハーマイオニーはすぐに身を乗り出した。
「生きてるうちに呼ばれるなんて、めったにないわ!」


“絶命日”という言葉に、チユは小さく瞬きをした。
──死んだ日を、祝う?


「変だよな、そういうのって……」と、ロンがうなる。
彼は膝の上の羊皮紙を苦い顔でにらんでいた。どうやら宿題が終わっていないらしい。
「死ぬほど落ち込みそうじゃないか」


その言葉に、チユはページをめくる手を止めた。


「でも、ちょっと興味あるかも」


チユが口を開いた。視線はまだ本の上にあったけれど、声はほんの少し楽しそうだった。
「おばけのパーティって、どんな感じなのかな。火の玉がいっぱい浮かんでたりして」

「もちろん、チユも行くわよね?」と、ハーマイオニーが声を弾ませた。


少しのあいだ、迷う沈黙。
でも──


「うん、行ってみたい」
チユは、小さくうなずいた。
「おばけのパーティなんて、生きてるうちに何回あるかわからないもの」


「そうこなくっちゃ!」ハーマイオニーはぱっと笑った。


そのときだった。
フレッドとジョージがこそこそと何かをテーブルの下でいじっていたかと思うと──

「行ったぞ、ジョージ!」
「よし、いいタイミング!」


バンッ!


「うわっ!」


火トカゲが突然、ぱちぱちと火花を散らしながら宙に跳ね上がり、談話室をぐるぐると飛び回りはじめた。
尾を引くようにオレンジ色の星をまき散らしながら、まるで空飛ぶ小さな花火だった。
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