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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第7章 死者たちの晩餐会



それからすぐに、10月がやってきた。


湿った冷たい空気が、校庭にも廊下にも、寮の部屋にも忍び込んできて――チユは朝起きるたび、毛布から出るのがいっそうつらくなっていた。


「……うう、空気が冷たくて……鼻が凍る……」


そんなことをぼやきながらも、いつもより1枚多く着込んで、階段を降りる。
途中ですれ違う生徒たちの中には、マフラーをぐるぐる巻きにして、くしゃみを連発する子も多くなっていた。


校医のマダム・ポンフリーは、先生にも生徒にも次々と風邪がうつっていくのに手を焼いていた。


「"特製の元気爆発薬”を飲めばすぐ治りますよ」


そうマダム・ポンフリーは胸を張っていたけれど、問題はその後だった。


ある日のこと――
体調の悪そうなジニーに、パーシーが無理やり薬を飲ませた瞬間のことは、今でもチユの頭にくっきり残っている。


ぼんっ――!


「わっ!」

ジニーの頭のてっぺんから、まるで火事になったかのように、もくもくと煙が吹き出したのだ。
それも、燃えるような赤毛のあいだから。


「おおっと、ジニー発火!」

「煙の出るウィーズリー、新製品かもな?」


そう言って、フレッドとジョージが顔を見合わせてにやりと笑った。
パーシーは顔を真っ赤にしながら、ジニーの頭を慌ててタオルで扇いでいたけれど――火は出ていなかったので、チユはちょっと安心した。


それから、城の外では何日も銃弾のような大きな雨が続いていて、窓が風に叩きつけられる音が止まらない。

湖の水かさは増して、岸辺の草を飲み込み、花壇はもう、誰かが泥遊びをした後のようになっていた。


そんな中でもハグリッドのかぼちゃたちは着々と育ち続けていて――先日ちらりと見えた時には、チユの背丈ぐらいあるんじゃないかと思うほど、巨大にふくれ上がっていた。



雨音、風音、誰かのくしゃみ、そして薬のせいで耳から飛び出る「煙」の音。



ホグワーツでの10月は、騒がしくて、ちょっと不思議で、それでもどこか温かかった。
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