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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第6章 穢れた血、幽かな声




「バレたらどうするのよ、もう!」



ハーマイオニーが、半分呆れたように言った。
だけど、声にはどこかくすぐったそうな響きがあった。



「まあ、ちょっとだけなら……可愛い魔法ってことで…」


チユがそう言うと、ハグリッドは満足気にふふんと鼻を鳴らし、ロンの方を向いてうなずいた。



「おまえさんの妹も、そう言っとったよ。昨日、ちょいと寄ってったもんでな」

「ジニーが?」


そのとき、ハグリッドのひげがぴくりと動いた。
ちらりと横目でハリーを見る。


「ぶらぶら歩いてただけ、って言ってたがな。わしの勘じゃ、あれはこの家で誰かに――そうさな、たとえばハリーに――ばったり会えるかもしれんって思っとったんじゃないかのう」



ハグリッドはわざとらしく片目をつぶって、ハリーにウィンクした。


「ふむ、わしが思うに、あの子は欲しがるぞ――おまえさんのサイン入りの――」


「やめてくれよ!」



ハリーが慌てて言うと、ロンが突然「ぷふっ!」と吹き出した。
次の瞬間、口から勢いよくナメクジが飛び出し、ぬらぬらと地面を這った。



「うわっ!」



チユが思わず一歩さがると、ハグリッドの大声が響いた。


「気いつけろ!そのへん、かぼちゃの根っこだ!」



慌ててロンを引っ張り、ナメクジが近づかないようにした。

ハグリッドの畑に、再び静けさが戻る。
空の色が少しだけ黄色味を帯び始めていて、そろそろ昼食の時間だった。



「ハグリッド、今日はありがとう。かぼちゃ、本当に立派だったよ」


「うん。お邪魔しました!」



チユがにこりと笑って言うと、ハグリッドは照れたように鼻をこすった。



「なんの、またいつでも来ると良い」


4人は小屋をあとにして、学校へと戻ることにした。
歩きながらもロンはときどきしゃっくりをして、そのたびに小さなナメクジがぴょこりと口から出てきた。



「もう……これ、一生治らなかったらどうしよう……」

「それは困るね、食堂を出禁になるかも」



チユがからかうと、ハリーもくすくす笑った。


やがて、4人はホグワーツの冷たい石の床に足を踏み入れた。
ひんやりとした空気が、夏の外気との違いをはっきり感じさせた。
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