第6章 穢れた血、幽かな声
「バレたらどうするのよ、もう!」
ハーマイオニーが、半分呆れたように言った。
だけど、声にはどこかくすぐったそうな響きがあった。
「まあ、ちょっとだけなら……可愛い魔法ってことで…」
チユがそう言うと、ハグリッドは満足気にふふんと鼻を鳴らし、ロンの方を向いてうなずいた。
「おまえさんの妹も、そう言っとったよ。昨日、ちょいと寄ってったもんでな」
「ジニーが?」
そのとき、ハグリッドのひげがぴくりと動いた。
ちらりと横目でハリーを見る。
「ぶらぶら歩いてただけ、って言ってたがな。わしの勘じゃ、あれはこの家で誰かに――そうさな、たとえばハリーに――ばったり会えるかもしれんって思っとったんじゃないかのう」
ハグリッドはわざとらしく片目をつぶって、ハリーにウィンクした。
「ふむ、わしが思うに、あの子は欲しがるぞ――おまえさんのサイン入りの――」
「やめてくれよ!」
ハリーが慌てて言うと、ロンが突然「ぷふっ!」と吹き出した。
次の瞬間、口から勢いよくナメクジが飛び出し、ぬらぬらと地面を這った。
「うわっ!」
チユが思わず一歩さがると、ハグリッドの大声が響いた。
「気いつけろ!そのへん、かぼちゃの根っこだ!」
慌ててロンを引っ張り、ナメクジが近づかないようにした。
ハグリッドの畑に、再び静けさが戻る。
空の色が少しだけ黄色味を帯び始めていて、そろそろ昼食の時間だった。
「ハグリッド、今日はありがとう。かぼちゃ、本当に立派だったよ」
「うん。お邪魔しました!」
チユがにこりと笑って言うと、ハグリッドは照れたように鼻をこすった。
「なんの、またいつでも来ると良い」
4人は小屋をあとにして、学校へと戻ることにした。
歩きながらもロンはときどきしゃっくりをして、そのたびに小さなナメクジがぴょこりと口から出てきた。
「もう……これ、一生治らなかったらどうしよう……」
「それは困るね、食堂を出禁になるかも」
チユがからかうと、ハリーもくすくす笑った。
やがて、4人はホグワーツの冷たい石の床に足を踏み入れた。
ひんやりとした空気が、夏の外気との違いをはっきり感じさせた。