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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第6章 穢れた血、幽かな声




「おまえさんがそんなこと、するわけないって、知っとるさ」


ハグリッドが、大きな手でマグカップを包みながら言った。
暖炉の火がぱちぱちと木を焦がす音が、まるでハグリッドの言葉に拍手しているみたいに聞こえた。


「ロックハートにも、そう言ってやったわ。ハリーはそんな小細工なんぞせんでも、あの男よりずっと有名じゃってな」



ハグリッドの目が、子どものようにいたずらっぽくキラキラと輝いた。


「それからのう、ついでに言ってやったんじゃ。『あんたの書いた本なんぞ、一冊も読んどらん』ってな!」


「ええっ!」


思わずチユが口を押さえる。思いきりすぎて、少し笑ってしまった。
ハグリッドの正直すぎる言い回しが、なんだか痛快だった。


「そしたら、そそくさと帰っていきおったわ。おっ、ロン、ちょいとヌガーでもどうじゃ? 甘いもんで元気出るぞ」



ロンの顔が洗面器の上にまた現れた。
けれど、青白いその顔に笑顔はなかった。



「……いらない。気分が悪いから……」


「じゃあ、気晴らしに裏へ来いや」



ハグリッドが立ち上がると、大きな体が椅子をぎしりと鳴らした。
ハリーとハーマイオニーがマグカップを空にして、チユもそっと立ち上がる。


ハグリッドの小屋の裏庭に出ると、そこには土の匂いと日差しの中に、信じられないほど大きなカボチャが並んでいた。


「わあ……!」


チユが思わず声を上げる。
カボチャというより、大きな石の塊にしか見えない。

10個以上あるそれぞれが、子ども1人分くらいありそうだった。



「どや、よーく育っとるじゃろ。ハロウィーンの祭り用にな。あのころには、もっとええ大きさになるぞ」



ハグリッドは自慢げに胸を張った。
その顔は、さっきまでの話題の時よりずっと明るかった。



「肥料は……何を?」



とハリーが問いかけると、ハグリッドはちらりと肩越しに振り返って、周囲に誰もいないのを確かめた。



「……その、ちいっと魔法で助けとるんじゃ」



魔法省の決まりでは、ハグリッドのようにホグワーツを退学させられた者は魔法を使ってはいけないらしい。

けれど、彼がその禁を破ってまでカボチャを育てているのは、それだけ大切にしているからなのだと、チユにはわかる気がした。

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