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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第6章 穢れた血、幽かな声



チユは、そっとロンの背中をなでながら、そばにしゃがみ込む。


「ロン……ちゃんと出して。大丈夫、ここにいるからね」


横でハーマイオニーが真剣な顔で言った。



「あの呪いって、ただでさえ難しいのよ。まして杖が折れてたら……」

「まったくじゃな……無理すりゃ、自分に返ってくる」



ハグリッドは腕まくりして、手早くお茶の用意を始めた。
犬のファングがどこからかやってきて、チユに威嚇を始めた。やはり動物は苦手だ。


そんなチユをよそに、ハリーがファングの耳をカリカリと指でなでながら、ハグリッドに尋ねた。



「ねえ、ハグリッド、ロックハートは、なんの用だったの?」


「井戸の中から水魔を追っ払う方法を、俺に教えようとしてな」


ハグリッドは唸るように言いながら、テーブルの上に置かれた半分羽根のむしりかけの雄鶏を、どかっと脇へ押しやり、ティーポットを真ん中にドンと置いた。
チユはぎょっとして、ハーマイオニーの腕を掴む。


「に、にわとり……」


ハグリッドはふん、と鼻を鳴らして続けた。


「まるで、俺が何も知らんとでも言うようにな。その上、自分が泣き妖怪とかなんとかを追っ払った話を、さんざぶち上げとった。やっこさんの言っとることが1つでも本当だったら、俺はへそで茶を沸かしてみせるわい!」


ハグリッドのあまりの剣幕に、チユはびくっと肩を震わせた。


「それって……少し偏見じゃないかしら。ダンブルドア先生は、あの先生が1番適任だとお考えになったわけだし──」


ハーマイオニーはいつもよりちょっと上ずった声で反論した。


「他には誰もおらんかったんだ」


ハグリッドは砂糖をボウルにこんもり入れながら言い、みんなに皿をすすめた。
ロンはその横で洗面器に顔を突っ込み、ゲボゲボとナメクジを吐き続けている。


チユはそっと、ロンの背中をさすった。
(ロン……かわいそうに……)


「1人もおらんかったんだ。闇の魔術の先生をするもんを探すのが難しくなっちょる。だーれも進んでやろうとせん。みんな縁起が悪いと思いはじめたんだな。ここんとこ、だーれも長続きしたもんはおらんしな」


ハグリッドはぼそぼそと続け、ふっとロンをあごでしゃくった。


「で、誰に呪いをかけるつもりだったんかい?」
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