第1章 五条悟
突如永遠と感じた時間は終わりを告げる。
「着きました。降ります。」
男に言われるまま車から降りると先ほどと同じように肩に担がれる。
急な浮遊感に「わっ…!」と悲鳴が漏れる。
………言葉は丁寧なのに対応は雑。米俵になった気分なんですけど。
玄関のドアが開く音がし、男は帰宅の挨拶をすると靴を脱ぎ歩き出す。
担がれ歩いていると急にピタリと止まり「連れて参りました。」というと、低い声で「入れ」と別の男の声がする。
扉を開ける音がし、椅子に降ろされた。
拘束を解かれ、目隠しを外されると長時間の暗闇から解放される。
眩しさから目を顰めながら前の見ると、60代くらいの袴を履いた男性が正面に座っていた。
私の斜め後ろには30代くらいの男。
私を連れてきた男だろうか…。
一瞬だけその男と目が合ったが、すぐに視線は正面へと戻された。
私はゆっくりと息を吐く。
恐怖が完全に消えたわけではない。
だが、拘束が外れたことで、代わりに別の感情がじわじわと浮かび上がってくる。
――理不尽だ。
静かにそう思った。
「どのようなご用件か存じませんが、少々やり方が強引すぎるのではありませんか」
声は思ったより落ち着いていた。
「いくら悟くんの関係者とはいえ、説明もなくこのような手段を取られるのは納得できません」
言い切ったあと、もう一度だけ深く息を吐く。
今は冷静でいなければならない。
そう自分に言い聞かせながら、正面の男を見据えた。