第1章 五条悟
あれは忘れられない。
夏油くんが呪詛師になってから半年たった頃のことだった。
その日は任務だった。
任務は完了できたけど負傷してしまった。
きっと悟くんなら傷一つつかないだろう…。
手当を受け、高専近くの神社の石段に座り、やっぱり私は弱いんだなって膝を抱え額を膝につけて反省している時だった。
背後に人の気配を感じ、振り返ろうとした瞬間視界が暗くなった。
ひゅっと息を飲むのと同時に手首を拘束された。
呪力を感じない。呪詛師ではなさそうだけど。
抵抗をしようとすると背後から話しかけられる。
「あなたが高藤 柚希さんですね?坊ちゃんのことでお話があります。同行くぁさい。」
「……急になにするんです?!…坊ちゃん…?もしかしてあなたは…。」
急な目隠しと拘束、恐怖から声が震える。
「そうです、私は五条家に仕えるものです。今から場所を変え詳しい話をするので着くまで静かにしてください。」
男は私を肩に担ぐと歩みを進め、車のシートに下ろされる。
男も隣に乗り込み、運転手がいるのかぼそぼそと話をした後ゆっくりと車が動き出した。
「あっ、あの、私をどこに連れて行く気なの?悟くんのこっ…もがっ。」
口早に問いかけるも喋っている途中で男の手で口を塞がれる。
怖い…、でも五条家の人なら危害は加えないだろう。
この人からはなにも感じないし。
「静かにといったでしょ?」
ゆっくりと頷くと口から手を離される。
沈黙だけが車内を満たしていた。
目隠しをされたまま、拘束された手首に力を込める。
心臓の音ばかりがやけに大きく聞こえた。
車に揺られる時間は、永遠のように長く感じた。