第1章 五条悟
「噂では聞いてたけどほんとに五条くんが先生してるんだね…。」
「ほんと学生の時には想像もできなかったわー。…柚希はもう五条のこといいの?」
硝子ちゃんはちらりと私を見ながら聞いてきた。
「…うん。もういいんだ。」
一度そう答えてが、苦笑いする。
「…まぁいいと言うか、私からお別れしたんだもん。今更だよ。」
眉毛を下げながら笑う。誤魔化すようにグラスを口に運ぶ。
その時ずしっと肩に重さ感じた。
「……あっ、歌姫先輩寝ちゃった。すごい飲んでたから。」
歌姫先輩の体勢を整えて羽織っていたカーディガンを脱いでかける。
「まぁ、あんたがいいならいいんだけどさ。柚希には後悔ないようにして欲しいんだよね。」
硝子ちゃんもビール片手にウインクしてきた。
「硝子ちゃん、ありがとうね。」
「うん、じゃあ向こうで呼ばれてるから行くな。また話そ。」
手を振り硝子ちゃんは向こうの席に移動していった。
……硝子ちゃんにも、悟くんと別れた理由は話していない。
引きずっていることだって。
それなのに、どうして分かってしまうんだろう。
そう、私は今でも悟くんが好きだ。
吹っ切れたことなんて、一度もない。
たとえ仕方なかったとしても。
別れを選んだのは、私自身なんだから。