第1章 五条悟
手を繋がれたまま肌寒い道をゆっくりと歩く。
無意識にぎゅっと悟くんの手を握ると悟くんはくすっと笑いながら握り返してくれた。
………あー…、これが幸せってことなんだろうな。もう一生手など握れないと思ってた。
いまこの時だけはこのままでいたいな…。
暫く歩いていると見たことある景色に辿り着く。
「ここは…。」
………あの日の神社の階段だった。どうしてこんなところに…。
悟くんは立ち止まりゆっくりと私に向き直る。
「僕と別れてからもう10年くらいになるね。柚希はこの10年どうしてた?」
「…だね。この10年は特別なにもなかったよ。強いて言うなら1級術師に昇格出来たことくらい。あとはもうがむしゃらに任務してたって感じだったかな。」
「そっかそっか。僕はね、五条家の当主になったでしょ、そしたら領家の令嬢と結婚しろって言われ出して断ったら次から次へと見合い写真もってくるから大変。それである時に使用人が柚希の話をしてるのを聞いたの。」
私は目を見開いた。
唇が震えて声が出なかった。
その様子を見ながら悟くんは話を続けた。
「柚希、別れを切り出したの、五条の人間が柚希に僕の弱点になるだとか、結婚のことを言ったからだったんだろ?」
悟くんの言葉を聞いた瞬間、心臓が嫌な音を立てた。
息が止まる。
どうして――。