第1章 五条悟
「………大丈夫。ありがとう…。…久しぶりだね、元気だった?」
当たり障りのない言葉に悟くんは元気、じゃあ程々にするんだよ〜とだけ返答し、踵を返して去ろうとする。
………あっ、行っちゃう…。
お酒を飲んで理性が切れてしまっていたらしい。
気づけば咄嗟に彼の服の袖を掴んで引き留めてしまった。
悟くんが裾を掴んでいる私の手を見てから私に視線を戻した。
「あっ…ごっ、ごめんなさい。………なんでもないから。」と裾から手を離した。
「柚希、もう、僕のこと避けなくていいの?避けなくていいならここにいるけど。」
心臓から嫌な音が聞こえる。
実際避けていた。でもその言葉は聞かれたくなかった。
………そんなの、ここにいてほしいよ…。未練はタラタラだけど私は大人だ、大丈夫。気持ちを隠し通せる。
悟くんは生唾を飲み込んでいる私をアイマスク越しに見ているのがわかった。
でも私はなかなか視線を合わせることができなかった。
「………避けない。」
やっとそれだけが口から出た。
「ん。じゃあここで少し話そうか。」
そういって悟くんは私の隣に腰をおろした。