第1章 五条悟
「ごめんね、悟くん。」
声を出したけど、声が引き攣る。
「私ね、他の人が好きになっちゃったんだ。」
そんなことありえないのに。声が震えそうになる。
悟くんの反応が怖い…。無意識に両手を繋いでぎゅっと握った。
「それにね、やっぱり悟くんの恋人っていうのは荷が重いんだ。あれが有名な五条悟の恋人かーって。いつもコソコソ言われる。好きになった人非術師…、そのほうが私には合うのかもなって。」
私はなにを言ってるの…。もう言いたくない、嘘だって言ってしまいたい…。でもそれを言ってしまえば…。
だめっ…悟くんに嘘を悟られてはいけない。
あぁ、彼の傷ついた顔から目を背けたい…。
「本気なのか?」
悟くんの低い声が耳に届く。空気が一段と重くなるのを感じた。
悟くんがまた一歩静かに私に近づいた。
「…柚希、本気で俺と別れたいの?」
本気なわけないよ…。でも頷くしかないんだ…。
私は生唾を飲み込んで声が震えないようにまた手に力を入れる。
「別れたい。……ばいばい、悟くん。」
先ほど止まったはずの涙が再度溢れそうになって唇をかんだ。
ーーまだ、泣くな…。
カバンを持ち涙を必死に堪えて廊下に出る。
教室からはガンッと机を蹴る音とという声が響いた。
一瞬足が止まったけど私は部屋まで走った。
自分の部屋のドアをガチャっと開けて、鍵を閉めた。
今にも大きな声を出して子供のように泣いてしまいたいけど隣は硝子ちゃんの部屋。
聞こえてしまう。シャワーを出して、必死に声を殺して泣いた。
その後ベッドでもたくさん泣いて気づいたら朝になっていた。
ーーーーーーー
寝起き、いつもとは違う目の重さを感じた。
鏡に映る私の目は腫れていて、少し冷やしてみたけどあまり変わらなかった。
このまま休みたい…。と思いながらも重たい腰をあげた。
部屋から出るとちょうど硝子ちゃんも部屋から出てきた。
「おっはよー…ってどうしたの?まーたあのクズになんかされた?」
「…いろいろあって………わかれた。」
「いろいろねぇー。それ理由聞いていいの?」
「お願い、いまは聞かないで…。」
「ん。了解。まっ、言いたくなったら聞くよー。」
軽い返事に心救われた感じがした。
「ありがとう。」
硝子ちゃんのこの距離感がとてもありがたい。