第18章 キミの隣
『失礼します!』
「入って構わん」
久しぶりに聞くその声に緊張し、ゴクンと唾を飲み込んだ。
深呼吸をしてからドアノブに手をかける…
「久しぶりだな、エマ」
『お久しぶりです、四ノ宮長官』
やはりいつ見てもこの人のオーラは凄い…
「珍しいな、お前がわざわざここに顔を出すとは…」
そう、私は今1人で本部に来ている。
鳴海隊長と会う可能性が高いので1人で来ることを避けていたのだ。
あまり気乗りはしないけど皆んなが日比野さんの為に動いている。
私だって少しでも彼の為になるなら…っとここへやって来た。
『お願いがあるんです』
「怪獣8号か…?」
流石は功さんだ。
鋭い…
『はい。功さんの目で見て判断して欲しいんです。日比野カフカが人間かどうかを…』
私の言葉に大きく溜息を吐き、ゆっくりと功さんは言葉を続けた…
「母親に似てきたな…」
『えっ?』
予想外の言葉になんとも間抜けな声が出てしまった。
「彼女もよくそんな瞳をして突っかかってきてたもんだ。まぁ心配するな、奴を処分するかは自分の目で確かめてからにするつもりだ」
『ッ!日比野のこと、宜しくお願いします』
部屋を出ていくエマの背中を功は静かに見つめていた。
今は亡き仲間である神崎ユキ、そしてその夫であり自身の部下であった白雪ソウタの姿を思い出していた。
あの日、自分が間に合っていれば彼女たちは死ななかったのだ。
彼女たちからエマを頼むと託されている。
功にとってはキコルと同じくらいエマのことも大切にしていた。
エマが第1部隊を抜ける理由を知った時は鳴海にビンタをお見舞いし、周りをビビらせたのは有名な話。
「神崎、白雪、見てるか?君らの娘は立派に成長しているぞ…」
そう自身のデスクの引き出しにしまっていた写真を取り出し呟いた功の表情は父親の顔をしていたのであった…