第2章 2
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「なんつーか…部屋の雰囲気が良いなぁ…っていうことや」
カップに湯を注いでいた彩夏が顔を上げて、目を丸くする。
「…そうですか?」
俺はあぐらをかいて、キッチンに立つ彩夏を見、笑って頷いた。
彩夏は俺の顔を見てから、そうかな…と首を捻った。
そんな彩夏を横目に、俺は縮めていた手足をぐーっと伸ばした。
「雰囲気が良すぎて……」
「『ここに住みたくなった』なんて言わないでくださいね。」
「う゛っ」
───何で、分かったんや…
「嫌ですよ、私。『カッコいい男友達がいる!!』って、女友達にたかられるの」
そう言って彩夏は、心底嫌そうに顔をしかめた。
───女友達にたかられるのが嫌なんであって、俺と一緒にいるのは……嫌じゃないんやな?
───よし、そういうことにしておこう。
◇
「あ」
カップに湯を注いでいると、yasuさんが何かに気付いたように、声を上げた。
「渡すのを忘れとったわー」
立ち上がったyasuさんが私に手渡した物───それは……。
「あぁ!!これは!!」
「前に『美味い』って言うとったやろ?アポ無し直撃の詫びや」
私の手にあるのは、以前kiyoさんから分けてもらって食べた、スタジオ近くのお店のとても美味しいケーキ…!!
「戴いても良いんですか!?」
「あぁ、その為に買うてきたんやからな」
それを聞いて、私はとても嬉しくなった。
すぐに戸棚を開けて、引っ越しの時に他の食器と一緒に持ってきたはずの、ケーキ皿を探す。