第2章 2
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ちょっと困った様子の彩夏に、あはははと大きな声を出して笑うと、俺は姿勢を整えた。
「さて、そろそろ行くか」
「あ、はい。…お気をつけて」
「おう。彩夏、今度はスタジオか事務所で会おうな。待っとるから」
彩夏の顔に、明るい笑みが浮かぶ。
そしてそのまま、彩夏は頷いた。
笑顔の彩夏に手を上げて挨拶をしてから、俺はアクセルを踏み込んだ。
───朝日が昇る方へ、これからまた3時間のドライブや。
でも不思議やなぁ、胸が晴れ晴れとしとる。
………早くメンバーにも伝えなアカンな、彩夏のホンマの気持ち。
『私は……一緒に…いたいです…』
◇
遠ざかるyasuさんの車を見送って、やりかけだったいろいろなことをやらなきゃ、と部屋に入ろうとした時、ポケットのケータイが鳴った。
「ん?坂本さんからだ」
同僚の坂本さんからのメール。
私は午前だけ休みがもらえたけど、坂本さんは仕事中だろう。
短い本文を読んで、私は大きくガッツポーズをした。
『鈴木くん、退院決まったって!!!!』
数ヶ月、仕事が回ってきていた同僚の退院が決まった。
……つまり、私はまたマネージャー業を再開出来るのだ。
───大きく伸びをして、晴れ晴れとした気持ちで見上げた空は、高く青く澄んでいた。