第2章 2
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「散らかってますけど…」
申し訳なさそうに小さく言った彩夏の後に続いて、俺は彩夏の部屋に入った。
………確かに、部屋の真ん中に置かれたテーブルの上には、書類やらペンやらファイルやらが散らばっとったけど、俺から見れば別に大したことはない。
ま、ちょっと調べ物をしてました、っていう程度や。
それでも彩夏は、慌ててテーブルに散らばる書類やらを片付けとる。
「あー、別にええよ?そのままで」
「そんな!!仮にもyasuさんはお客様ですから」
「仮にもって…。まぁ、確かにアポ無し直撃やったからな…」
俺は目を逸らして頭を掻いた。
◇
「えっと…紅茶で良いですか?…ティーバッグですけど」
書類を広げておいたテーブルと、いろいろ置いてあった床を簡単に片付けて、私はキッチンに立った。
まぁ…狭い部屋だからキッチンっていう程でもないんだけど。
「ん、あぁ、悪いな」
座布団代わりのクッションを置いた床に一度座ったyasuさんが、物珍しそうに部屋を見回しながら答える。
「…別に、何も良い物置いてないですよ」
yasuさんが私の家にいる…いつも一人で日常生活を送っている空間に、普通だったらあり得ない人がいるという状況。
部屋の隅々まで見られているようで、ちょっと恥ずかしくなった私は、ティーカップの準備をしながらyasuさんに言う。
「いや…彩夏の家って、こんな感じなんやーって思ってな」
「…築10年、家賃4万8千の普通のアパートですよ?」
「そうやなくて…」