第1章 1
◇
──19:41
必要ない電気を消された、少し薄暗いフロアには私一人。
今日はなぜか皆さん帰るのが早い…
「よーし、ちゃっちゃと片付けよう!!」
ムダに自分で自分に喝を入れて、パソコンに向かう。
今日中にパソコンへの入力を片付けてしまえば、明日は午後からの出勤でも良いと課長が言ってくれた。
──そうだ。今日は帰りにコンビニでケーキを買って帰ろう。
最近頑張ってる自分に、小さなご褒美をあげよう。
鈴木さんが退院して、仕事が少し楽になったら、いつもは見ているだけの高いケーキを買おう。
それまで…高いケーキはお預け。
私は深呼吸をして、モニターを見つめた。
「あ」
そういえば…西條さんとはさっき話したけど『皆さん』は元気かな…?
◆
──20:36
タイミング良くスタッフの中に、娘の4歳の誕生日だから…と嬉しそうに笑いながら帰ろうとしたヤツがおって、俺はガソリン代を出すからマンションまで乗せてってほしいと声をかけた。
ヤツは笑顔で頷き、俺は助手席に乗り込んだ。
途中、スタッフの娘のプレゼントを買う為に寄り道をしたが、20時過ぎにはマンションに着いた。
家に着くと、俺は迷わずバスルームに向かいザッとシャワーを浴びた。
東京の夏は蒸し暑くて、全身汗でベタベタして不快やった。
汗をシャワーで流し、冷蔵庫で冷やしてあった500mlのミネラルウォーターを飲み干すと、俺はふぅ、と息を吐いた。
──見上げた壁掛け時計は20時36分。
「…………」
俺はクローゼットから適当に服を掴み出すと、素早く身に付けて車の鍵を手に取り、外に飛び出した。