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anxiety

第1章 1



──18:50
「う~ん!!疲れたー」

「お疲れ、滝本」

大きく伸びをした私に、同僚の坂本さんが笑いながら声をかける。

「今日も残業?」

「そうなんですよ。鈴木さん、入院中ですから…」

「大変だね」

「大変です……坂本さん、手伝ってくれません?」

「絶対イヤ。」

それから、「手伝ってあげたいけど、ゴメンこれからデートなの」、と私に手を合わせながら言って、坂本さんはフロアを出ていった。
その後ろ姿を手を振りながら見送って、私はふぅ、と息を吐いた。
入院中の同僚の仕事が、なぜか私に転がってきて、最近は会社を出るのが専ら23時。
ギリギリ間に合う終電に乗って、アパートに着くのが大体0時頃。
……とてもハードな毎日。
『彼等』のマネージャー業も、もう1ヶ月半くらい行ってない。
今週末も仕事が入っているから、上京出来そうにない。

「………」

私はケータイのアドレス帳を開いた。



──19:03
「はい、もしもし?─あ、滝本?」

スタジオでの作業中、マネージャーの西條のケータイが鳴った。
電話を取った西條の口から出てきた名前に、メンバー全員が反応して西條を見る。

「「「「「彩夏か!?」」」」」

無理もない。
最近、俺達の口癖は「彩夏はいつ来るん!?」だったから。
アシマネの彩夏は、最近本業の仕事の方が忙しいらしく、もう1ヶ月半くらいこちらに来とらん。
そんな彩夏から電話があったとすれば、反応するのは当たり前やろ。

「今週末?うんうん──、ん?そうだなぁ──それなら──うん、分かった。それじゃあまた、来れそうだったら連絡くれる?」

西條の言葉から、彩夏が今週末も来れないと言うことが分かり、期待混じりの笑みを浮かべていたメンバーが一気に肩を落とすのが分かった。
───もちろん、俺も。

「彩夏、今週も来んのかい」

「え~…寂しいなぁ…」

「仕事、忙しいんやって?…そらしゃあないわ」

メンバーはそれぞれの気持ちを口にする。
スタジオはすぐに暗い雰囲気に包まれた。

「───俺、帰るわ。」

俺は近くにあった上着を掴んで立ち上がった。


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