第2章 2
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ちょっと訊きづらくて、俺は彩夏から目をそらして話をしとった。
「ほら、あの、最近彩夏も忙しいやろ?もし…俺らのマネージャーでいることが負担なら、無理せんで辞めても……ええんやで?多分西條か事務所が、後釜を補充してくれる…はずやし。………せやから…っ」
一息にそう言ってから見た彩夏は、俺を見ながら涙をいくつもポロポロと落としとった。
「彩夏……??」
「…………っ」
唇を噛み締めて、溢れる涙を拭おうともせず、彩夏は涙を流しとった。
「あ、す、すみません」
俺と目が合って、彩夏は慌ててティッシュに手を伸ばし、やっと涙を拭った。
◇
どうしよう……yasuさんが、ビックリしてる。
でも、涙が止まらない……。
「…すみません、突然……」
ハッと我に返って、慌てて目の前のティッシュを掴んで2・3枚引き出し、目と頬に当てる。
……きっとマスカラが落ちて、ぐしゃぐしゃになってるだろうな……顔。
私はしゃくりあがってくる呼吸を、深く静かに息をすることで整えながら、考えていた。
「それはつまり……私にマネージャーを辞めてほしいっていう……ことですか……?」
ガタガタの本心を必死に隠し、詰まりながら言った言葉に、yasuさんが私を見る。
そして、目をそらす。
「良いですよ。……マネージャー……辞めても」
◆
俺は目を見開き、彩夏を見た。
彩夏は眉間にシワを寄せてテーブルを見つめ、唇を噛み締めていた。
「……何が、アシマネですかね。まともに仕事も出来てないのに…。迷惑ばっかりかけて…忙しいのに、何も手伝えなくて…」
小さく呟く彩夏。
「…辞めます、マネージャー。これ以上中途半端に続けていても、皆さんに迷惑かけるだけですもんね」
そう言って笑った彩夏。
───その笑顔は……俺が見たかった笑顔やない。
「今日はわざわざ、この話をするために来てくださったんですよね、ありがとうございます………すみませんでした」
深く頭を下げる。
しばらく頭を下げて、スッと上げた顔にはやはり笑みが無い。
──違う、俺は……。
「……本気、か…?」
俺が掠れた声で問うと、彩夏はビクリと体を震わせた。